『るろうに剣心』の大ヒットも記憶に新しい少年ジャンプの実写映画たち、今でこそマンガの実写化が市民権を得た感もあるが、90年代はどうだったのだろうか?
「北斗の拳 FIST OF THE NORTH STAR」(95年公開)
主人公のケンシロウは薄汚れたシルベスター・スタローン風の役者が熱演するも、頭上には常に「死兆星」が輝いているかのような覇気の無さ。北斗神拳のアクションも頼りなく、特撮やCGで必死にカバーしても、まったく痛そうに見えないのが悲劇である。
ユリアはなぜか鷲尾いさこがカタコトな感じで気だるく演じ、ライバルのシンは、誰をモチーフにしたのかわからない程の別人ぶり。しかも、南斗聖拳はほとんど使わず、好んで銃に頼る傾向はジャギもミックスされてしまっている模様。
CGでのスプラッタシーンは「あべしっ!」って感じが表現できているものの、とても「愛を取り戻せ」そうもない、あまりに「YOUはSHOCK」な出来栄えだ。
「シティーハンター」(93年公開)
原作のイメージをブチ壊してしまった、ゆるいスラップスティックコメディ映画。
ジャッキー・チェンが主人公の冴羽リョウを演じている時点で、すでに物語は別物。クールでハードボイルドなイメージを兼ね備えたスイーパー(悪党掃除人)のはずが、いきなり冒頭で私立探偵という肩書きで自己紹介する有様。もはや『加とちゃんケンちゃんごきげんテレビ』と同レベルだ。
槇村はコメディ仕立てでサクッと死亡し、続いて登場する香役はなぜかジョイ・ウォン。
無駄に豪華なキャスティングながら、原作のイメージは完全無視。でもなぜか、香が巨大ハンマーを振り上げるシーンは原作に忠実だったりする。

メインストーリーは、後藤久美子演じる香港で失踪した日本の新聞王の一人娘を救出すること。
バトル中、唐突に人気格闘ゲーム『ストII』を模した対戦シーンになるのも意味不明。エドモンド本田や春麗にまでなってしまうジャッキーはあまりに心が広すぎだ。
「キャッツ・アイ」(97年公開)
主役の来生三姉妹は、上から藤原紀香、稲森いずみ、内田有紀で、当時の美女を取り揃えた印象。
原作の主役は次女の瞳だが、映画では三女の愛に変更していることに、「大人の事情」を感じられずにはいられない。

コスチュームもレオタードからレザーのボンデージファッションへと変わり、さらにマスクまで被るから、もはや『バットマン』に登場するキャットウーマンだ。
全体としては、出来損ないの『チャーリーズ・エンジェル』でしかないが。
「ろくでなしBLUES」(96年公開)
主人公の前田太尊を務めたのは前田憲作。チャンピオンにもなった当時現役のキックボクサーで、ルックスもボディもイケてる、いわば早すぎた魔裟斗だ。監督は『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ、そして悪評高い実写版『デビルマン』の那須博之。
ビーバップ濃度高めのガラの悪さは気になるが、前田憲作のアクションは見ごたえ十分。高校生にしては老け過ぎでセリフ回しも微妙だが、味わい深いものはある。
ヒロインの千秋を務める小沢真珠はこの作品が映画初出演。98年に公開された続編では山口もえが千秋役として同じく映画初出演を果たしているので、マニア的には見逃せない。
こう振り返ると、近年のマンガの実写映画化はかなりクオリティが上がって来ていると思う。
原作の知名度が確実な観客動員に繋がるためか、実写映画化の波はむしろ勢いを増すばかりだ。望むのはファンを裏切らない作品に仕上がること。
ベースとなるマンガをしっかりと読み込んだ上での脚本とキャスティングをお願いしますよ、関係者のみなさん!
(バーグマン田形)
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