
例えば、念仏の教えを中心に置く浄土真宗において、坐禅は行われない。ところが同センターでは、臨済宗の僧侶を招いて坐禅会が開かれる。参加者の中には、ここで坐禅を学び、それが高じて本格的に日本で坐禅を学び出したドイツ人もいる。日本の仏教だけではなく、台湾やベトナムの仏教団体との交流が図られ、毎年大晦日の法要には、デュッセルドルフの隣町ケルンの天理教信者が中心となった雅楽アンサンブルが来寺し音色が奏でられる。キリスト教正教会やユダヤ教との学術シンポジウムも行うなど、異宗教間の対話も設けられている。
ドイツ人は仏教を受け入れるのか
実際ドイツにおいて仏教はどう捉えられているのか? 自身も本願寺派の僧侶である同センター所長・青山隆夫さんは「関心が高いのは確か」だという。現在キリスト教に対して飽き足りなさを感じ、教会税を払いたくないためにキリスト教徒をやめる人が増えているのだ(ドイツでは税務申告の際に「キリスト教徒」と申請すると「教会税」という教会の経費を賄うための税金を納めねばならない)。もちろんキリスト教を棄教した人が、すべて仏教に帰依するわけではない。だがドイツ人の仏教に対する興味の増大は、肌で感じているという。