しかし、絵本『二番目の悪者』の表紙には、タイトルにある「悪者」という単語が発するイメージとは裏腹に、金色の立派な鬣(たてがみ)を持つライオンが、まるで王として振舞うかのようにグラスを持ってたたずんでいる。

表紙をめくると、そこには「これが全て作り話だと言い切れるだろうか?」と書かれていた。まるで、これからサスペンス映画でも見るかのような緊張感だ。念のため改めて言っておくが、これは絵本である。
自分こそが王にふさわしいと考えていた金のライオンがある噂を耳にする。街はずれに住む優しい銀のライオンが「次の王様候補」になっているというのだ。それを知った金のライオンはとんでもない行動を始める――というストーリーだ。
自らの立場の危うさを感じ他人を攻撃する者、攻撃されても反撃をしない者、どちらの味方をするでもなくただひたすらに情報に踊らされる者、攻撃される者を守ろうとする者……。日ごろの我々の生活の縮図がそこにはあった。
絵本でありながらどこか緊張感のあるタイトルと、決して笑顔で読みすすめることのできない内容。この本の出版経緯を担当編集者である「小さい書房」の安永則子さんに聞くと、「本を企画するとき、何もないところから突然テーマが生まれるわけではなくて、これまでの経験や考えてきたことが土台になっているように思います」と話す。