
59話はこんな話
はつ(宮崎あおい/崎の大は立)は、新次郎(玉木宏)に、なぜ、あさ(波瑠)を選んだのか訊ねた後、新天地・和歌山に旅立った。
あさはまた炭坑に行き、そこで気分が悪くなって倒れてしまう。
あさとはつ
新次郎があさを好んだ理由は、実にとるに足らないものだった。
京都に駱駝を観に行ったが見ることができなかった代わりに、【カエル】を頭に乗せて走り回るあさを見た、という「それだけ」の理由。
はつとしては拍子抜けだっただろう。はつだって、井戸の中の【カエル】だったのに。同じ【カエル】でも運命は大きく変わってしまった。
けっこう、ここ、大切なのではないか。
生活環境がどんなに違っても本質的にはそんなに変わらないってことで。
カエルを頭に乗せて無邪気に駆け回ることが、ひとりの人間の落胆を救うこともあるし、家が没落し貧しくなっても、愛やら幸福やらを見つけることもできる。
生きて行くこと、幸せをつかむことについて、前向きなはつの姿に、大人になることは、なにがなんでも生きていくことなんだな、と思わせたあさとはつの会話。
しかも、これが、ただただ馬鹿正直に、ひたすらがんばればいいことがあるとかいう話ではなく、はつははつでやっぱり意地と誇りをもって、ある種のやせ我慢の美学を貫いているのではないかという余白も残してある。だから、あさは泣きながら「私も負けない」と返す。
そして思う、新次郎があさのカエルエピソードを理由にしたのは、はつの気持ちを慮ったのかもしれないと。
新次郎は、商売という勝負の土俵に上がらない代わりに、いろいろな人へさりげない思いやりを振りまく人物として描かれている。
朝の15分の間でも、単純化させない作り手の意地、あっぱれ。
とはいえ、気になるのは、やっぱりあさとはつが「お家を守る」を大事にしている点。彼女達の頑張るモチベーションは「お家」。この価値観から離れることができないのは、時代設定のせいなのか、それとも。
新次郎とあさ
いつか置いていかれるんじゃないか、と新次郎を不安にさせているあさ。旦那さまがそんなかわいらしいことを考えているとは思いもせず、また炭坑に赴くが、気分が悪くなってしまう。
その前に、「おっかちゃんみたい」「優しいお顔」になってきたとカズ(富田靖子)が指摘することで、先の展開が予想できる。
あさもいよいよ・・・。
これは、置いて行かれたくない新次郎の執念の成果だろうか。
(木俣冬)
