朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第13週「1964-1965」
第59回〈1月25日(火)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉
※本文にネタバレを含みます
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“トランペットを吹くことだけができない奇病”
幻とか劇中劇が出てはくるもののこれまでわりとリアリズムのドラマだった『カムカム』だが、ジョー(オダギリジョー)が罹ったのは「トランペットを吹くことだけができない奇病」。ほかのことはできるのに……。ここだけリアルじゃないわけはないと思うのだが、いったいなんの病なのだろうか。【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜59回掲載中)
あちこち病院に行っても一向に治療方法がみつからない。すっかりまいってしまっているジョーにるい(深津絵里)は「あきらめへんって決めたんです。ジョーさんと幸せになることを」と押しかけ女房的なことを行いはじめる。美味しそうなお弁当を作り、洗濯をして、かいがいしい。でもそれがますますジョーを苦しめる。
ジョー「君に僕の苦しみなんかわかるわけない」
るい「わかるよ」
ジョー「軽々しく言うな」「もう解放してくれ」
ジョーの剣幕に気圧されて、るいはすごすご竹村家に帰る。
「サニー・サイド」とラジオ
心配する和子(濱田マリ)にるいは「ほっとしてます」と言う。「ちょっと怖かったんです、家庭を持つことが」
「こんな私が家族を作ることなんてほんまにできるんやろうかって」
幼い頃、母と別れ、祖父と叔父の家で育ったるい。心を閉ざし、家庭の良さを味わってこなかったことが気にかかっていた。でもそれはきっと本心ではなく、そう思うしかないのではないかという気がする。もちろん少しはその迷いはあるだろうけれど、だからこそ幸せになりたいと思ったのではないか。
そこにラジオから磯村吟(浜村淳)の声。大人気のビートルズの「Can't by the my love」を……「かけません」とはずし、「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」をかける。
それをジョーも旅館で聞いていた。お互いラジオの「サニー・サイド」を聞きながら、海で語り合った日を思い出す。
るいが旅館に行くとトミー(早乙女太一)がいて、ジョーの姿がない。ラジオからは磯村吟が「固い約束夢じゃない。さああれから4年経ったんです」と話をしている。ジョーも「サニー・サイド」を聞いたに違いないとるいは確信したのだろう。とするとジョーが向かった先は――。
るいはトミーの車で思い出の海へ向かう。海のデートは1963年で4年は経ってないが「固い約束夢じゃない」はるいを応援するような言葉に聞こえたに違いない。
海の中にどんどん入っていくジョー。絶望のあまり海に入っていくわけだが、この海はアメリカに繋がっている。届かぬアメリカの夢を求めて海に入っていく。
「暗闇なんや。歩いても歩いても暗闇しかないんや。サニー・サイドが見えん」と苦悶するジョーをるいは「怖がらんでいい」「私が守る」と抱きしめる。
「あなたとふたりで日なたの道を歩いていきたい」
母・安子(上白石萌音)と同じことを言っているとるいは気付いていないのだろう。
「サニー・サイド」とラジオがふたりを結びつけた。ラジオは『カムカム英語』がなくなってしまったけれど、磯村吟がるいたちの生活を彩っている。ジョーが膝をつき、その頭をなでるるいは子どもをあやす母のようだった。
ベリーはイチゴ?
るいを心配して来たベリー(市川実日子)は大阪の大学を卒業し、京都に戻る。「あんた変わったな、強なった」とるいを讃え、「京都の家の番号も書いとく。何かあったらいつでも電話しておきよし」と書いた名前は「野田一子」。で「誰?」とるい。一子→イチゴ→ストロベリー→ベリー だったことがわかった。(木俣冬)
【前回の朝ドラ】『おかえりモネ』の全レビューを見る
番組情報
連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
2021年11月1日(月)~<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送
制作統括:堀之内礼二郎 櫻井賢
作:藤本有紀
プロデューサー:葛西勇也 橋本果奈 齋藤明日香
演出:安達もじり 橋爪紳一朗 深川貴志 松岡一史
音楽:金子隆博
主演:上白石萌音 深津絵里 川栄李奈
語り:城田優
主題歌:AI「アルデバラン」
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami