数ある中でも、今回は初主演作品に絞って紹介したいと思う。
『八神くんの家庭の事情』(1994年)
原作は楠桂。TOKIOの国分太一のドラマ初主演作品。ごく普通の高校生・八神裕司(国分太一)が抱える、たったひとつの普通ではない事情。それは母親の野美が同年代の美少女にしか見えないのだ……。
シンプルにして絶対的な物語の根幹は、母親が高校生にしか見えない美少女であること。なのに、その母親役が当時40歳を過ぎていた夏木マリと言う謎のキャスティングにより、原作にあったフレッシュ感は皆無に。その熟成された大人のムードが原作ファンを奈落の底に突き落としてしまう。しかも、この夏木マリのキャラの濃さが全面に押し出されてしまい、「実は魔女」という原作無視のとんでも設定まで加わってしまったから手に負えない。

原作者のクレジットも「原案」の形に改題される事態となり、当然のごとく視聴率も低迷、再放送もDVD化もされていない。初主演のインパクトを残せなかった国分的にも悲劇である。
ちなみに、TOKIOによるエンディング曲『時代を(TOKIO)よろしく!』は、デビュー曲『LOVE YOU ONLY』のカップリング曲だ。
『イグアナの娘』(1996年)
原作は萩尾望都の短編。菅野美穂の連続ドラマ初主演作品。自身の正体がイグアナと思い込んでいる女子高生リカ(菅野美穂)と、娘がイグアナにしか見えない母親(川島なお美)の愛憎劇だ。
リアルなイグアナフェイスにセーラー服と言う衝撃の姿が記憶に残っている方も多いと思う。ビジュアル面のインパクトが強すぎるが、「子供を愛せない母親」と「親に愛されない子供」の関係は母娘の共依存や虐待問題も描いており、醜形恐怖症やいじめなどでリカの悩み苦しむ姿が多感な時期にある視聴者を惹きつけた。

菅野美穂の演技力の高さも話題となり、7.9%から始まった視聴率は右肩上がりで上昇を続け、最終回では19.4%記録。その伸び率も含め、90年代を代表する名作ドラマとなっている。
ドラマのラストでは、母親は人間に生まれ変わって記憶を失ったイグアナのお姫様だったことが判明。原作ではほのめかす程度だった設定をはっきりと形にしているが、これはこの時間帯の連続ドラマとしてのベストな落としどころだったように思う。
闇のパープル・アイ(1996年)
原作は篠原千絵。雛形あきこのドラマ初主演作品。『イグアナの娘』の後番組として始まった今作はある意味「ヒョウの娘」の話。ヒョウに変身する「変身人間」の女子高生・倫子(雛形あきこ)を巡るサスペンスホラーだ。
ヒョウへの変身シーンは7000万円もの予算を掛けた当時の最新CGを使用しているそうだが、正直どこにそんなに掛かっているのか分からない出来……。それより何より、このドラマの醍醐味はハードなストーリーにある。とにかく、人がバンバン死にまくるのだ。
第1話冒頭からエクストリーム。DQNに暴行されそうになった主人公は力が目覚め、無意識のままヒョウに変身。DQNグループを惨殺してしまうのだ。話が進むに連れ、親友、妹、父親、恋人も主人公を付け狙うマッドサイエンティストの手により死亡。最終的に娘を守って主人公も死亡と言う絶望が畳み掛ける展開は、夜8時のドラマとは思えない過激さ。今では絶対に放送できないはずだ。

さらに雛形あきこのシャワーシーンあり、セミヌードありで、ファンサービスも大盤振る舞い。特に、血が甘く感じる設定の倫子が血を愛おしそうになめるシーンのエロティックな描写は青少年を大いに悩ませている。……実にいい時代だった。
『イグアナの娘』のドラマ内で岡田義徳と結ばれた菅野美穂が、これを縁に実生活でも交際していたり、『闇のパープル・アイ』で主人公の親友を務めたのが、歌手としてブレイクする前の浜崎あゆみで、初々しい姿で好演するもドラマ中盤で殺されていたりと今振り返ると非常に興味深い。
しかし、20年近く時が経っても解せないのが『八神くんの家庭の事情』での夏木マリのキャスティング……。
「夏木さんの事務所の事情」なのだろうか?誰か教えてくださ~い!
(バーグマン田形)
「八神くんの家庭の事情」
「イグアナの娘 (小学館文庫) 」
「闇のパープル・アイ(1) (フラワーコミックス) 」