毎年話題を集める「新語・流行語大賞」。
その時代を象徴する新語や流行語も時が経つと、記憶の片隅に追いやられてしまうもの。
90年代にも様々な「ことば」が一躍世間を賑わしたが、中でも芸能人絡みで「すでに忘れられていそうな新語・流行語」を振り返りたい。

1990年 流行語部門・大衆賞『愛される理由』


受賞者:二谷友里恵

俳優の二谷英明と女優の白川由美の娘という芸能界のサラブレッド、二谷友里恵が書いたエッセイのタイトル。1987年に結婚した郷ひろみとの生活を綴った同書はこの年のベストセラーになった。
慶應義塾大学卒業の才女とあって、郷との離婚後は、家庭教師のトライ創業者の平田修と再婚。現在はトライグループの社長として辣腕を奮っている。『アルプスの少女ハイジ』を使ったシュールなCMシリーズの陣頭指揮を取っているのも彼女だ。
郷には愛されなかったが、全国の学生には愛されている模様?

1991年 流行語部門・金賞『若貴』


受賞者:おかみさんこと花田憲子(現・藤田紀子)

アイドル人気を誇った力士・貴ノ花を父に持つ若花田・貴花田兄弟は、二子山部屋入門時からマスコミが大注目。その家族の絆の物語はテレビや雑誌を通じて広く国民の関心事に。弟・貴花田が大横綱・千代の富士を破り、引退に追い込むほどの活躍を見せた若貴フィーバー絶頂期の受賞となっている。
後に兄弟揃って横綱となる大偉業を成し遂げるも、実父で師匠に当たる二子山親方の愛人問題と母の不倫疑惑が浮上した中で離婚が成立。さらに親方の急逝から遺産を巡るトラブルも起こり、若貴兄弟も絶縁状態に。昼ドラ的にドロドロした展開で、家族がバラバラになってしまうシビアな現実を見せつけるのであった。
「勝氏(まさるし)」こと現・花田虎上(まさる)がアメフトにチャレンジするもすぐに断念していたり、現・貴乃花親方が、相撲の「四股」をヒントにしたエクササイズ「シコアサイズ」を考案したりしているのはあまり知られていない。

1992年 大衆語部門・銀賞『歌手の小金沢クン』


受賞者:小金沢昇司(歌手)

当時のコーワの喉スプレー薬『フィニッシュコーワ』のCMに登場。今以上に深夜にヘビロテされていたコーワCMの影響力は大きく、一躍お茶の間の人気者に。
しかし、この時点では露出もヒット曲もない全くの無名状態。「歌手の小金沢君が使っているのはフィニッシュコーワ」とナレーションが被さるが、本物の歌手なのか疑っている人の方が多かったのであった。
北島ファミリーとあって、山本譲二同様、UFO目撃ネタが得意だったりする。

1993年 新語部門・銀賞『新・○○』


受賞者:坂本一生(タレント)

当時は新党ブームで、『新生党』『新党さきがけ』『日本新党』などが誕生。この流れから、様々なジャンルで「新」を冠することがブームだった。そこに登場したのが、『新加勢大周』だ。人気俳優・加勢大周の事務所独立に伴い、事務所側が2代目の加瀬大周を用意、この芸名をあてがったのだ。ただし、3週間足らずで坂本一生に改名となった。
良くも悪くも話題性十分のデビューとなったが、そこをピークに芸能界の引退復帰を繰り返し、プロレスラー、長距離トラックの運転手、スポーツジムのインストラクター、探偵、便利屋など様々な仕事を転々とする流浪の人生を歩んでいる。
加瀬大周が覚せい剤絡みで芸能界を引退している今振り返ると、実に縁起の悪い芸名である。

1994年 大賞「すったもんだがありました」


受賞者:宮沢りえ(女優)

宝酒造『タカラ缶チューハイ』のCMで宮沢りえが言ったセリフ。1992年秋、大人気力士だった貴花田(現・貴乃花親方)と婚約するも、翌93年の年明け早々に婚約解消した宮沢りえ。そんな彼女の「すったもんだ」とすりおろしリンゴを掛けているのだが、明るく飲み干す姿で、世間が持つネガティヴで悲愴なイメージをぬぐい去っている。
貴花田の「吸った揉んだ」をイメージさせる意味ではトリプルミーニングか……!?

1995年 トップテン入賞「見た目で選んで何が悪いの!」


受賞者:瀬戸朝香(女優)

コダックの使い捨てカメラ『スナップキッズ』のCMで瀬戸朝香が言ったセリフ。このCMから12年後の2007年、V6の井ノ原快彦と結婚。
見た目で選んだかどうかの判断は読者に任せたい。

1996年 大賞「自分で自分をほめたい」


受賞者:有森裕子(マラソンランナー)

バルセロナ五輪の銀メダルに続いて、アトランタ五輪の銅メダルを獲得した際に言った言葉が元となっている。使い勝手がいいので、今でも使う年配者を見掛けることがある。
1998年に米国人男性と結婚する際の会見で、その男性がなぜか「アイ ワズ ゲイ」と突然のカミングアウト。こちらもちょっとした流行語となった。

1997年 大賞『失楽園(する)』


受賞者:渡辺淳一(作家)、黒木瞳(女優)

大胆な性描写で不倫を描いた渡辺淳一の小説『失楽園』が300万部の大ヒット。意外にも掲載紙は日本経済新聞だった。役所広司&黒木瞳で映画化、古谷一行&川島なお美でドラマ化もされ、中年男女の不倫の代名詞となった。この年の邦画では『もののけ姫』に次ぐヒットになり、ドラマの視聴率も夜10時台にして20%を超えるなど、社会現象化している。
ちなみに、石田純一の「不倫は文化」発言は96年秋。ある意味、この発言は正しかったのかも知れない!?

1998年 大賞「だっちゅーの」


受賞者:浅田好未・西本はるか(パイレーツ)

『ボキャブラ天国』でブレイクした女性コンビの決めフレーズ。両腕で胸をはさみ、谷間を強調しながら言うのがポイント。「だっちゅーの光線」「練乳ビーム ピュッピュッピュッ」など、持ちギャグのバリエーションは他にもあったが、もちろんまったく流行らなかった。

1999年 トップテン入賞『ミッチー・サッチー』


受賞者:浅香光代(女剣劇・女優)

当時のワイドショーを連日賑わせたのが、ミッチーこと浅香光代とサッチーこと野村沙知代の抗争劇。
野村沙知代の学歴詐称や脱税問題から、シワ取り手術代金の未納やオーナーを務めていた少年野球チームでの横暴ぶりに至るまで、ありとあらゆる悪事が必要以上に細かく取り上げられバッシングの対象に。
デヴィ夫人や美輪明宏、ビートたけしと言った大物から、十勝花子や渡部絵美ら「過去の人たち」まで参戦。美川憲一や神田うの、テリー伊藤のような「ワイドショーの達人」的な人々も巻き込んでカオスな大騒動に発展していった。

いかがだっただろうか? その時代の思い出や空気感もよみがえっただろうか?
忘・新年会シーズン、上司や先輩とのコミュニケーション手段にあえて使ってみるのもアリかも知れない。94~96年は比較的使いやすそうだが、97、98年は大ヤケドしそうな雰囲気プンプンである……。
(バーグマン田形)
編集部おすすめ