本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった

ロダンの『考える人』といえば、知らない人はいない超有名なブロンズ像だ。かつて小学生だった人なら皆、そのポーズを真似したことがあるはずだ(ないなんて言わせない)。


それほど有名な作品だけに、ロダンが造った本物を拝むのはちょっと大変そうに思えるが、いわゆる「本物(オリジナル)」とされる『考える人』は、意外とたくさんある。

というのも、ロダンが造った原形をもとに石膏で型をとり、青銅を流し鋳造することで作品が生まれるからだ。日本語版ウィキペディアには「26箇所にある」と書かれており(諸説あり)、サイズも3種類あるよう。日本では京都国立博物館、国立西洋美術館(東京)などに展示されているので、実際目にした人も少なくないだろう。

そんな『考える人』、所在地のリストをざっと眺めると(英語版ウィキペディアより)、やはりというか美術館や博物館や大学など、アカデミックで堅苦しい場所ばかりが並んでいるが、いや一箇所、サウスコリアに何やら牧歌的な名前が出てきましたよ。

それが「Beartree Park(ベアツリーパーク)」、ベアとツリーのパークである。


150匹のクマと1000種以上の植物に出会える、約10万坪のこの公園。設立者のイ・ジェヨン氏が45年かけて個人的に管理してきた植物園を、2009年に一般公開して始まった私設テーマパークだ。ネットで写真を見るに、野外にクマがわんさかいる様子は日本で言う「クマ牧場」だが、これだけの規模のものを個人で経営しており、しかも本物の『考える人』まであるというのだから普通じゃない。どんなすごいところなのか、さっそく行ってみた。

『考える人』は、山と畑に囲まれた田舎町に


場所は半島の中ほどにある世宗市。列車で1時間30分の鳥到院駅に向かい、そこからバスやタクシーを乗り継ぎ30分ほど行った山の麓に、その公園はあった。周囲は畑と山に囲まれたのんびりしたところで、正直言ってかなりの田舎である。


本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった
テーマパークといった趣きのベアツリーパーク


テディベアグッズ売り場を横目に見ながら入場ゲートをくぐり、きれいに整った池、そしてその次にあるゴージャスな洋館をくぐり抜けると、その先の庭園に見えるのは、出ました『考える人』だ!

本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった
ばーん


石畳の庭園の真ん中、青空をバックに、あのポーズの人が重厚な存在感を放っていた。やはり本物のポージングは違う。小学生には決して真似できない重みがある。そして本物の『考える人』と、韓国の田舎で出会えるなんて、実に感慨深い。

韓国語でこのような説明が書かれていた。「ベアツリー庭園に置かれた『考える人』は、単なる複製品ではなく、全世界に25点だけのエディション中、15番目のエディションであり、国内では2つのみ存在する」。
おお、これは間違いなさそうだ(ちなみに韓国でもう一つの本物は、ソウルの「プラトー美術館」にある)。

後に改めてベアツリーパークに電話取材してみたところ、『考える人』が設置されたのはオープンから2年後のことだそう。「考えながら散策する場としてほしい」という思いから、設立者が個人的に所蔵していた『考える人』を展示するに至ったのだという。個人所有とは、これまた大変なことである。

クマだらけのハートフルな公園


話はベアツリーパークに戻るが、考える人の先にはちょっとした動物園があり、さらに山を登っていくといよいよクマの展示場が登場。クマに餌をあげられるコーナー、クマの名前を紹介するコーナーは、まさに見慣れたクマ牧場だ。
他にもクマのリアルな石像をふんだんに展示したり、クマの顔ハメがあったり、クマ好きにはたまらないハートフルな空間となっている。
本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった
クマだ!

本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった
顔ハメだ!

本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった
うかれ人形だ!

本物の「考える人」が、なぜか韓国のクマ牧場にもあった
ビーグル犬だ!

もちろん本業である植物園もかなり充実しているようだが、クマのかわいらしさにノックアウトされた私はあまりしっかり見なかった。すみません。

私がこの公園を散策する間に考えたことといえば、山でクマ1匹に出会ったらとんでもなく怖いのに、なぜ団体でいるとかわいらしく見えるのか、ということと、街でビーグル犬1匹に出会ったらとんでもなくかわいらしいのに、なぜ檻の中にいると狂暴に見えるのか、ということであった。

皆さんも『考える人』のいるベアツリーパークで、貴重な考察の時間を過ごしてほしい。
(清水2000)