『SLAM DUNK』のアニメは1993年10月16日 から1996年3月23日にかけて放送されたが、この約2年半の間にオープニング、エンディングに使われたのは全6曲。それらの曲に共通点があるのをご存知だろうか?
楽曲を提供したのはBAAD、ZYYG、大黒摩季、WANDS、MANISH、ZARD。
そう、すべてビーイング系列のアーティストなのである。『SLAM DUNK』は、ビーイングのアニメタイアップ戦略の先駆けであり、アニメと楽曲が相乗効果でそれぞれ人気を拡大していったのだ。
90年代ビーイングブーム最盛期を支えた『SLAM DUNK』のテーマ曲たち。あなたのお気に入りはどの楽曲だろうか?
『君が好きだと叫びたい』 BAAD
第1期オープニング曲とあって、懐かしアニメ特番などで必ず掛かるのがこの曲。『SLAM DUNK』といったら、真っ先にこの曲を思い浮かべる方も多いはず。オープニングが変わっても、次回予告では最終回までこの曲のインストが使われ続けていた。その影響も大きいかも知れない。
原作初期に色濃かったラブコメ要素を拡大解釈したかのような内容で、主人公・桜木花道がヒロイン・赤木春子を思う気持ちとすれば馴染まないこともないが、原作を読み尽くしたディープなファンからすると、そのさわやかすぎる青春路線の曲調はどこかムズ痒いものがあった。
オリコン最高16位ながらロングセラーを続け、最終的には40万枚近くのヒットとなったBAAD唯一のヒット曲。
ボーカルの顔と名前が思い浮かぶ人は相当のマニア。この無個性ぶりこそ、ビーイング系バンドの真骨頂といえよう。
『ぜったいに 誰も』 ZYYG
花道が坊主頭になってからの第2期オープニング曲。ラブコメ要素が皆無となり、本格バスケマンガに進化してからのイメージにふさわしい硬派な曲調だ。
ZYYG最大のヒット曲は、ビールのCMとしてヘビロテされていたデビュー曲『君が欲しくてたまらない』であり、この曲はそれに次ぐヒットとなっているが、実はこの時点でボーカル以外のバンドメンバーは総入れ替えとなっている。メンバーが流動的なこともビーイング系バンドの特徴だ。
『あなただけ見つめてる』 大黒摩季
第1期エンディング曲。原曲1番のショートバージョンかと思いきや、後半は2番をミックス。このアニメ専用アレンジに、カラオケで戸惑う人も多かった。
都会に住む恋多き大人の女性を描いた歌詞は、純朴を絵に書いたようなヒロイン・春子のイメージとは真逆。バックに流れるアニメ自体は、春子が花道のライバルである流川楓を思う気持ちにこじつけているようだが、これでは主人公の花道があまりに不憫である……。
『世界が終るまでは…』 WANDS
第2期エンディング曲。アニメの雰囲気とシンクロしていた感が強いが、実はラブソング。歌詞の冒頭部分はある意味、グレて道を踏み外していた"天才シューター"三井寿の孤独な心境とダブると言えないこともない。
WANDSはビーイング系バンドにしては珍しく、ボーカル・上杉昇の個性が際立っていたが、1997年にはギターの柴崎浩とともに脱退。この曲がWANDS最後のミリオンセラーとなっている。
ちなみに、『ドラゴンボールGT』のエンディング曲にもなった『錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう』は、声質は激似ながら2代目ボーカル・和久二郎によるものである。
『煌めく瞬間に捕われて』 MANISH
第3期エンディング曲。MANISHはボーカル&キーボードの女性2人組みユニット。ボーカルの高橋美鈴は、ZARDの坂井泉水系の長髪美人で、キーボードの西本麻里も抜群のルックスを誇っていた。
声質からこの曲も大黒摩季だと勘違いしていた人も多かったが、大黒摩季に比べると「雑味」が足りない感じとでも言うべきか。整いすぎたビジュアルとともに、その「雑味」のなさが突き抜けられなかった要因かも知れない。
サビの部分でライバルが一挙登場するアニメの演出は、『世界が終るまでは…』同様、盛り上がりにひと役買っている。
『マイ フレンド』 ZARD
第4期エンディング曲。ヒロイン・春子が湘北メンバーを思う気持ちとして、歌詞もアニメもシンクロしていた。
ZARD最大のロングセラーにして、最後のミリオン・シングル。初動から30万枚超えはZARD史上1位。すべてが大ヒットとなった、アニメ『SLAM DUNK』とビーイングのタイアップ、その大トリを飾るにふさわしい好記録だ。
「アニメの内容と必ずしも一致しない主題歌」が主流になったのも、このアニメからではないだろうか? 特に『あなただけ見つめてる』は、前述の通り世界観がまったくマッチしていない。
本来の歌詞「サッカーさえもくわしくなったわ」が、「お料理もがんばってる」に変わっているが、そもそも歌詞にサッカーが入っているものをバスケマンガに起用できてしまう時点で、ビーイングのタイアップ戦略の成功は見えていたのかも知れない……。
(バーグマン田形)