モミアゲをオシャレにのばし、キャスケットなんかをかぶってみる。そして、身体にピタッとはり付くほどのシェイプのTシャツ、通称「ピチT」を着たりする。あえて小さめサイズやレディースを選んだりもした。ボトムはフレアパンツやボンデージパンツ、なかにはスカートを合わせてみたりも。
そんなフェミニンなファッションの男子、通称“フェミ男”が、渋谷や原宿の街を闊歩する時代があった。
【フェミ男代表格だったいしだ壱成と武田真治】
いしだ壱成や武田真治がその代表格。モミアゲの流行と同じで、とにかく華奢で中性的。マッチョであってはいけない。ジャニーズ系王子的中性感でもない。
女性ぽいテイストを取り入れる流行は、時々訪れる。ただし、のちに登場する「ギャル男」や、現代の「男の娘」や「女子力男子」、少し前の「草食系男子」とはまた違う。いわゆる「ユニセックス」でもない。
【フェミ男と「男の娘」の違いは】
スーパーラヴァーズが、人気のブランド。いしだ&武田もよく着ていて、全身これで固めるオシャレ男子もいた。
フェミ男は、女装ではない。そこは「男の娘」とは違う。言葉遣いや仕草が女の子ぽくなるわけでもない。女子のファッションのコピーではなくて、「それがカワイイ(カッコいい)から着る」、そういう価値観だったわけだ。
とはいえ、いくら流行だからといって、誰でも似合うものでもないところが、このフェミ男ファッションの最大の難関だった。
そもそも普通サイズなのにピチッてしまう、ぽっちゃり体型では何の意味もない。かといって、ちょっとマッチョだったり骨太だったりすると、とたんにゴツい印象になってしまって「カワイイ」からすぐ遠ざかる。そのブランドの服やアイテムを身につければすぐなれるものではない、難易度の高いファッションでもあった。
【フェミ男は消えヤマンバファッションに】
当時、ヘソ出しファッションなど、ピチTは女子の流行でもあったこともフェミ男ファッションに影響を与えていたこともある。
代わって渋谷の街に現れた「女子系男子」は、ヤマンバファッションを自分たちのテイストに取り入れ、肌はガングロ、ド派手なギャルブランドを身に付け、時にはギャルメイクもして、「ウェ〜イ」な、「ギャル男」「センターGUY」。
女性化といっても、おそらくカルチャー的には対極の位置にある。フェミ男をギャル男が刈りつくしたといっていいだろうか。
いっぽうで、耽美方向に特化した「ビジュアル(V)系」など別方向の存在も並行して流れている。
そして2010年代。見た目も仕草もカンペキに女子になり切った(ただしオネエ方向ではない)、秋葉原系の流行「男の娘」の登場へとつながっていく。
(太田サトル)
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