大河ドラマは、戦国時代か幕末に活躍した人物が主人公になることが多い。だが過去には、描くのが難しいといわれる南北朝時代にスポットに当てた大河ドラマがあった。
それが「太平記」である。

実力派俳優を揃えた「太平記」


主役は真田広之。今ではアメリカに活動の軸を移しているが、当時から若手実力派といわれていた真田広之が主役に抜擢。他には陣内孝則、柳葉敏郎、高嶋政伸、本木雅弘、樋口可南子、武田鉄矢に加えて、北畠顕家役で後藤久美子が出演した。北畠顕家は美少年だったといわれていたので、イメージに近づけるべく女性でありながら起用されたそう。
宮沢りえなども出演しており、当時の若手人気俳優を揃えたキャスティングはトレンディドラマ全盛期だったこともあって「トレンディ大河」とも揶揄された。

「太平記」で行われた初めての試み


「太平記」では大河初となる試みも行われた。大河ドラマはそれまでモノラルで録音されていたのだが、ステレオ録音へ。
スタッフはステレオ録音のサンプルを増やすために、ロケのたびに自然の音を録音してドラマに使えるものを探しまわったという逸話もある。
また「太平記」では、資料が少ない中で鎌倉時代末期や南北朝時代のセットも再現され、劇中で使われた「火を噴く大道芸人」や「炎上する門」などのシーンはその後の大河ドラマにも流用されている。
また、今日の大河で定番となっている番組最後の「〇〇紀行」というコーナーは、太平記で初めて「太平記のふるさと」として設けられたのが最初である。

太平記の評価は


トレンディ大河と放送前は揶揄された「太平記」だったが、放送が始まると意外な好評に。最高視聴率34.6%、平均視聴率26%を記録しTVゲーム化されるなどブームとなった。

「太平記」以降は南北朝時代を舞台に描いた大河はない。
というのも、南北朝時代はかなり複雑であり、描くのが難しいと言われるからだ。しかし「太平記」では、尊氏を「英雄というより小さな正義感を頼りに迷いながら生きた人物」と捉え、人間くさい部分を描いたのが功を奏した。
捉え方や見方を変えれば難しい時代も描けるというのを魅せてくれた「太平記」。こうした大河ドラマをまた見てみたいものだ。
(篁五郎)

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