リングアナウンスさながらの紹介で登場する鉄人および挑戦者は、キッチンスタジアムと呼ばれる舞台で、制限時間・1時間という勝負を繰り広げていく。テーマとなる食材は毎回異なるほか、ゲスト審査員には服部幸應や岡田眞澄といった、料理評論家あるいは芸能界の食通などが顔を揃えていた。
陳建一ら 料理の鉄人の顔ぶれ
約7年間におよぶ放送のなかで、鉄人は7名存在する。いずれも鉄人の名に恥じない活躍を残したが、以下の4名は各ジャンルの代表も去ることながら、数々の名勝負を演じた鉄人でもあった。
■道場六三郎 和の鉄人
和の鉄人は3代続くも、その初代を担当したのが道場六三郎。銀座の老舗「ろくさん亭」の主人という肩書きを持つ道場は、勝率9割に迫る(27勝3敗1分け/現役時代)対戦成績を残し、番組内では最強鉄人と呼ばれていた。
■坂井宏行 フレンチの鉄人
初代鉄人の石鍋から引き継ぎ、二代目として87戦ものキャリアを重ねた坂井宏行。勝率では8割(70勝16敗1分)と道場に劣るも、鉄人の中で唯一、菓子職人と対戦できる技術を誇っていた。
■陳建一 中華の鉄人
赤坂「四川飯店」総料理長であり、鉄人最多のキャリア(94戦68勝23敗3分)を持つ陳建一。勝率は7割そこそこだが、連勝記録は17とキャリア同様に最多記録を残した。また、和やフレンチとは違い、中華の鉄人は陳が1人で担当していた。
■神戸勝彦 イタリアンの鉄人
陳と同じく、イタリアンの鉄人を1人で担当した神戸勝彦。対戦成績(23戦15勝7敗1分)こそ目立たぬものの、起用当初は唯一の20代だったことから、最年少鉄人として話題をさらった。
料理の鉄人を倒した挑戦者は
鉄人のキャリアを見ても分かる通り、挑戦者の数は計り知れない。だが、鉄人を倒せた挑戦者は、ごく一握り。いったい、どんな挑戦者たちが鉄人に勝利したのだろうか?それでは、秀逸な挑戦者達と達人の名勝負を見てみよう。
■周富徳 道場六三郎と因縁の対決
赤坂「離宮」総料理長の周富徳は、過去にタラバガニ対決で道場に敗退。豚対決では、周が「豚肉のグリーンアスパラ」など5品、道場が「豚ヒレ醍醐揚」など3品という形で展開。見事に周は勝利し、対戦成績を1勝1敗の五分とした。また、この対決はそれまで無敗を誇っていた道場に初黒星をつけた対決でもあった。
■小林カツ代 ジャガイモ対決で陳建一を圧倒
料理研究家の小林カツ代は、全国の主婦から支持される「家庭料理の神様」といえる存在。そんな小林は、ジャガイモの定番である「肉じゃが」を中心とする、家庭的な7品を披露した。陳は、伊勢エビとキャビアが入った「シャキシャキサラダ」ほか、中華料理とジャガイモのコラボ料理を創作したが、軍配は食材のよさを引き出した小林に上がった。
■深津泰弘 若き鉄人・神戸勝彦との鹿対決
最年少鉄人の神戸に挑んだのは、人気レストラン「ラ・ベルドゥジュール」のオーナーだった深津泰弘。25歳で渡欧した深津は、7軒のミシュラン三ツ星レストランで修行を積んだ実力派でもある。
こうして見てみると、近年では料理の鉄人のような臨場感ある料理番組は皆無な気もする。「料理の鉄人」の復活に期待したいところだ。
(ぶざりあんがんこ)
料理の鉄人3/第1章 和の鉄人“道場スペシャル” [VHS]