思い返すと、90年代前半。彼はドラマ界において時代の寵児でした。『101回目のプロポーズ』『愛という名のもとに』『ひとつ屋根の下』『高校教師』『人間・失格』……。彼が描いた作品はことごとく大ヒットとなり、『ひとつ屋根の下』に至っては、第11話で、フジテレビドラマ史上、いまだ破られていない「37.8%」という空前の視聴率を記録しました。
そんな野島作品の魅力を語る上で欠かせない要素の一つが、抜群のセンスで選ばれた楽曲です。主に大手事務所などに見られる「俳優と歌手の抱き合わせ商法」が蔓延する中で、彼のやり方はかなり異端。主に懐メロを駆使して、その作品の付加価値を向上させているのです。
しかも、ドラマとの相乗効果で、その曲自体も再評価され、リバイバルブームを起こすという離れ業も何度かやってのけています。ここでは、そんな懐メロ使いの名手・野島伸司が作中で扱った名曲を、いくつか振り返っていきたいと思います。
チューリップ「サボテンの花」…『ひとつ屋根の下』
『ひとつ屋根の下』が放送開始したのは、1993年。トレンディドラマブームが終わり、次のキムタク主演作品をはじめとする「月9ブーム」が始まろうとしていた時代です。その先鞭を、『東京ラブストーリー』『101回目のプロポーズ』と共につけたのが、この作品でした。