木村拓哉主演「月9ドラマ」、収録現場で起こった悲劇
2004年のフジテレビ系月9ドラマ『プライド』の収録現場で事故は起こった。
このドラマは、実業団のアイスホッケーチームを舞台とした青春ドラマ。竹内結子、佐藤浩市、市川染五郎、坂口憲二などの豪華キャストに、脚本は野島伸司という鉄壁の布陣で臨んだ意欲作であり、平均視聴率も25%を獲得している。
2004年1月20日、ドラマの収録は横浜市内のスケートリンクで行われていた。ドラマの収録が一段落して休憩に入った中、木村はパックをスティックで打って跳ね上げる練習をしていた。
その練習中、観客席にいたエキストラの一人が「こっちに打ち込んで」と声を掛けたという。その期待に応えて木村がパックを手で投げると、観客の一人がそれをキャッチ。これがきっかけとなり、自然とキャッチボールが始まったのだ。
まさかのファンサービスに、エキストラとして参加したファンたちは大歓声を送り続けた。そこで、乗ってきたキムタクはスティックでパックを打ち込むことに。しかし、これが良くなかった。
パックが一人の女性の顔面を直撃してしまったのだ。
キムタクの放ったパックにより女性の顔面が血まみれに!
木村と観客席の距離は約10m。リンクと観客席の間には高さ2.1mの透明のフェンスがあり、そこを山なりに打っていたとされる。アイスホッケーのパックは硬質ゴム製の円盤で重さ約160g。野球の硬球よりも重いといえばだいたいのイメージは付くだろうか?
シチュエーションからして、結構な勢いで打たなければ届かないはずである。これが顔面に当たったのだから、その衝撃は相当なものだ。被害者となった20代女性は顔面血まみれのまま病院に搬送。唇の裂傷と前歯1本が折れるケガを負ってしまった。
「パックが命中した女性はダラダラと口から血を流していました。ハンカチで押さえていましたが、どうしてあんなにと思うぐらい結構な血の量だったんですよ」との目撃者のコメントが当時の週刊誌には掲載されている。脳や首に異常がなく、入院せずに済んだのは不幸中の幸いだった。
事故を隠蔽? 発覚は1週間以上経ってから
ファンサービスの延長にあったとはいえ、パックの硬さや危険性を考えると、いかんせん軽率な行動であった。
しかし、本当の問題はそれ以外にもあった。事故の第一報が報じられたのは、事件から8日後の1月28日発売の日刊ゲンダイによる。
事故発覚後、木村本人に加えジャニーズ事務所とフジテレビはそれぞれ書面で謝罪文をマスコミ各社に送付。また、木村は事故当日に被害女性に謝罪の手紙を書いたほか、後日電話で直接謝罪したとされている。
しかし、木村本人がメディアを通じて直接謝罪をする機会はなかった。ドラマ『プライド』が始まる前、「僕にとってのプライドは、逃げないこと」と語った木村。なんとも皮肉な話である……。
(バーグマン田形)