その堂に入った怪演ぶりで今や悪役をやらせたら日本一の感さえあるが、90年代は「ローソン店長」としてさわやかな笑顔を振りまいていたことが印象深い。
そう、連続ドラマ仕立てで放送されていたローソンのCMシリーズである。
元々はローソンの単なる常連客だった高嶋政伸
シリーズ開始は1991年。“若大将”と称される形で政伸が登場しているが、実はこの時点ではローソンの単なる常連客で、店長を演じるのは実父・高島忠夫だ。2世タレントの切り札ともいえる親子共演をいきなり発動し、JUN SKY WALKER(S)の『スタート』に乗せてフレッシュなスタートを切った。
店員役には古手川祐子や沢口靖子も登場。シーチキンを猛プッシュしてきそうなキャスティングである。翌92年には斉藤由貴が新たにお客さん役で登場。政伸とのツートップ体制で、若い世代の代表となる親しみやすいキャラクターを演じている。
高嶋政伸、3年目にしてローソン店長に就任
1993年、ついに政伸が新店長(ローソン渦巻3丁目店)に就任。常連時代は営業マン的な描写もあったが、いつの間にか転職していたようだ。
店員には旬の顔ぶれとして、筒井道隆、鈴木蘭々、元ピチカート・ファイヴの野宮真貴、吹越満が登場。この時代の空気を感じる顔ぶれである。
豪華キャストによる「それいけ!ローソン通り物語」スタート
1994年、政伸店長は鈴木蘭々、吹越満とともに祖礼池(それいけ)町店に赴任。それに伴い、「それいけ!ローソン通り物語」と題した新シリーズに突入。
1995年には、パリから中山家の両親(長塚京三&由紀さおり)が帰国。1996年には、中山家と美容院の間にともさか家が引っ越して来ることで、ともさかりえと友人役の矢田亜希子も加わるなど、さらにキャストが充実していく。
この3年間は凝ったセットも特徴だ。店舗周辺60m四方のオープンセットを緑山スタジオに作り、アングルによりその都度セットを追加するなど、まさにゴールデンタイムのドラマ並みのこだわりで、個性豊かなキャラクターを生かしたCMを盛り上げていた。
実質的に森高千里メインのCMへ移行
1997年からはキャストを一新し、チサトサン役の森高千里とダーリン役の細野晴臣の夫婦がメインとなる「ローソンへ行かなくちゃ」編がスタート。CMでは、親子ほど年の離れたダーリンとチサトサンは大学教授と元・教え子の関係であったことが語られている。楽曲も森高千里が歌う「Let's Go」「いつもの店」などが起用され、ほぼ森高のローソンCMといった形にシフト。
政伸店長はラストに商品紹介か、ナレーションする程度の出演にとどまっていった。それでも、この壮大な“ローソンワールド”の橋渡し役として欠かせない存在には違いなかったが、1998年末を持ってシリーズは終了となる。高嶋政伸は、8年もの長期に渡ってローソンの顔を勤め上げたのだった。
ローソンは政伸が持つ「元気、明るさ、さわやかさ」を買って起用したとのことだが、四半世紀を経て、「病的、陰気、ねちっこい」が似合う男になるんだから、芸能界は実に奥が深いのである。
(バーグマン田形)
※イメージ画像はamazonよりHOTELシーズン4 後編DVD-BOX