現在、朝の連続テレビ小説というと、基本的には半年スパンで放送されている。しかし過去には、1年もの期間、放送された作品もあった。
その中のひとつが1991年に放送された「君の名は」である。

「君の名は」のあらすじ


「君の名は」は元々、脚本家・菊田一夫の代表作であり、1952年にラジオドラマで岸恵子主演で放送された。放送当時大ブームを起こし「放送時間になると銭湯から女性が消えた」という逸話や「真知子巻き」と言われたショールの巻き方が流行ったほど。
あらすじは、第二次大戦の東京大空襲の最中、見知らぬ男女である氏家真知子と後宮春樹が知り合う。二人は助け合って戦果を逃れ、命からがら銀座の数寄屋橋に。二人は生きていたら後にこの橋で会おうと約束し、お互いの名も知らぬまま別れた。
やがて、2人は戦後の渦に巻き込まれ、お互いに数寄屋橋で相手を待つも再会がかなわず、1年半後にやっと再会。
この時、真知子はすでに明日、嫁に行くという身であった。しかし、夫との生活に悩む真知子、そんな彼女を気にかける春樹、2人をめぐるさまざまな人々の間で、運命はさらなる展開を迎える……。

1991年に朝の連続テレビ小説に


NHKは1991年、この「君の名は」を朝ドラの題材に決めた。その背景には当時、朝ドラの視聴率が低迷しており、テコ入れを図るために原点回帰したのだとか。
そんな中、オーディションでヒロインの真知子役に選ばれたのが鈴木京香である。当時の鈴木京香は、モデルから女優に転向したばかりで、女優としてのキャリアは乏しかった。
しかし朝ドラの原点でもある、「女優の成長を見守る」という意味合いも込めて選ばれた。

千葉県に数寄屋橋を再現したオープンセットを作り、大幅な予算を導入するなど、期待は高かったが、朝ドラとしては視聴率が低迷。当時の朝ドラにおける歴代最低視聴率となってしまう。この原因のひとつとして、鈴木京香にも批判の声が集まり、「主演女優の器ではない」「演技が大根」という批判も。
現在の鈴木京香は、幅広い役柄を柔軟にこなす人気女優であるが、このような苦い過去もあったのだ。
(篁五郎)

※イメージ画像はamazonよりとと姉ちゃん part1―連続テレビ小説 (NHKドラマ・ガイド)