しかし、もし我が国にラジー賞があったのなら、この映画はその年の各部門を総なめにしていたはず。いや、それだけに留まらず、野球におけるサイ・ヤング賞、沢村賞のように、その名を冠した賞が制定され、駄作のキングオブキングスとして、永久的に語り継がれていってもいいでしょう。作品のタイトルは、『北京原人 Who are you?』。今から20年あまり前の日本映画です。
坂上忍も出演。豪華俳優が多数出演の『北京原人 Who are you?』
そもそも、日本において駄作は生まれにくいはずなのです。特に映画会社やテレビ局主導の大作は、ハリウッドには到底及びませんが、巨大資本が絡んでいるため、コケることなど許されません。
当然、人気俳優をキャスティングするし、監督、脚本家、演出家、カメラマンにいたるまで一流の仕事人を揃え、磐石の布陣で臨むものです。無難な仕上がり、中途半端な出来になることはあっても、極端につまらなくなることはほとんどないといって良いでしょう。
この『北京原人』も、東映・テレビ朝日・バンダイ・東北新社が共同製作に当たる、一大プロジェクトでした。予算はなんと20億円。
たまごっちとのコラボ商品「原人っちのたまごっち」も
また、必勝を期した『北京原人』製作陣は、プロモーション活動にも熱心でした。当時、社会現象になっていた、たまごっちとコラボして「原人っちのたまごっち」なる商品を発売。「進化の道をおしえるっち!」と書かれたパッケージに封入された、あの卵型のフォルム。機器表面には骨のデザイン柄が施されており、何ともキュートです。
ゲーム内容は、本家同様、育成シミュレーション方式をとっており、単細胞生物→オタマジャクシ→サルと成長。ここまでは、まぁ分かります。しかしその後、何故か埴輪→土偶に進化する謎展開。最終的にロケットに乗って宇宙へ飛んでいくという、映画本編同様の迷作ぶりを体感できます。
世間は唖然! 荒唐無稽な展開だった『北京原人』
このように、総力を上げてお膳立てした『北京原人 Who are you?』でしたが、結果は大コケ。
しかし、やはり最大の要因は作品内容の酷さ。頭蓋骨の化石から抜き出したDNAをもとに、北京原人を現代に蘇らせたまではまだ良いです。そこから原人たちを陸上競技大会や引田天功のマジックショーに参加させたり、挙句の果てにマンモスが登場したりと、もう滅茶苦茶。この映画のために、バスト丸出しのヌードシーンを披露した片岡礼子が不憫でなりません。
あまりの興行成績の悪さに、上映日数の縮小という措置が取られ、歴史的な大赤字に終わった『北京原人 Who are you?』。製作元である東映としては『鉄道員』の大ヒットによって、何とかこの損失を補填できたようです。そんないわく付きの迷作。怖いもの見たさで、ご覧になってみてはいかがでしょうか?
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより北京原人 Who are you? [DVD]