切り絵というと、ハサミで切って黒い台紙にのせる昔ながらの手法を思い浮かべる方が多いかもしれません。
よく見ると紙を折り返して立体にしています。そして、繊細な線や、やわらかさを感じさせる羽毛など、にわかには信じがたいレベルの細かさです。
作品名「記念日」。夜景の見える町並みでプレゼントした、薔薇をイメージした作品です。茶色く見えるのは焦げ目で、独特な雰囲気を醸し出しています。非売品ですが、同様の作品をオーダーした場合の価格は60万円(税抜き)とのこと。
奥行きを感じさせる階段もすべてつながっています。紙を薄くはがして濃淡をつけている部分がありますが、SouMaさん独自の技法です。
縫い合わせているように見える部分もありますが、糸ではなく細く切った紙です。
独学だからこそできた、唯一無二の世界観
作者のSouMaさんに作品について聞きました。
――切り絵を始めたきっかけは?
図画工作から自然に発生したものなので、特にきっかけはないんですよ。
――美術やデザイン関係の学校で学んだ経験はないそうですが、本当ですか?
はい。あまり芸術に興味がなかったので、そういった意味では芸術以外のことから様々なヒントをもらえた気がします。最近になって、ほかのアーティストや作品について知りたいと思うようになりましたね。
――作品のおおよその制作期間はどれくらいですか?
小さなものでは数日で終わることもありますし、大きなものでは2~3か月くらいです。
――作る前に全体のイメージはあるのでしょうか?
作品によって下絵を書いたり書かなかったりします。作品の個性が出る方法でつくり方を変えていくので、はじめにイメージが浮かぶ場合もあれば、作っていくうちに出来あがっていく場合もありますね。
――オーダーメイドでの創作依頼も多いそうですが、どういった要望が多いですか?
当初はプレゼントやウェルカムボードがほとんどでしたが、最近は家や店舗に飾りたい、看板として使いたいなど、さまざまなオーダーを頂いています。イメージを細かく指定される方もいますし、サイズだけ指定して「後はお任せします」といった場合もありますね。企業様からは広告関係の依頼が比較的多いです。
国内だけでなく、海外からもオファーが
――使用されている紙やカッターは、特殊なものなのですか?
作品によって和紙だったりコピー用紙だったり、さまざまですが、特殊な紙は使用していません。カッターは昔から変わらず、市販のものを愛用しています。
――かなり集中力が要求されそうですが、インタビューでは「雑然とした環境のほうがつくりやすい」と答えられていて、意外に思いました。
そうですね。集中しすぎずリラックスした状態で作ることで、より自由で柔軟な発想ができるんです。このスタイルは子供の頃から変わりません。
――切り絵の魅力はどんなところだと思いますか?
私の作り方はちょっと特殊で、切り終えるというゴールを定めずに構想を膨らませながら作っていきます。そういった意味では、切り絵なのに作りながら常に変化できることが魅力ですね。
――制作時に心がけていることがあれば教えてください
綺麗に作りすぎないことですね。とても繊細で精密なもののように感じられると思いますが、人の温もりがなにげなく感じられるように、ということを大切にしています。
――素人ながら「これは世界レベルだな」と感じました。海外からのオファーもあるのでは?
海外からは作品の依頼だけでなく、アートディレクションのオファーも頂いています。今後は、日本はもちろん海外での活動にも注力して、世界の方々に何かを感じていただければ嬉しいですね。
女子大生から年配の方まで幅広いお客さんが
お客さま数名に、来られた理由や感想などを聞いたところ、「ツイッターで見て来ました」「2~3年前にテレビで見たことがある」「新聞記事で知って、これは見なきゃと思って」などの意見がありました。
年齢層も幅広く、思った以上に多種多様な方が来ていました。日本大学芸術学部の学生さんも熱心に作品を見ていました。
ご自身も趣味で切り絵をやっているそうで、「見てるだけで疲れますね。でも作るほうはもっと疲れるんだろうな」と素直な感想をいただきました。
ご年配の方も多く、横浜から来たおばあちゃんは「縫い物や刺しゅうが好きなので見にきたんだけど、想像の域を越えてました。ちょっと言葉にならないレベル。来てよかった」とおっしゃっていました。
個展は6月26日(もともと6月20日まででしたが、会期延長)まで、中野のギャラリー「リトルハイ」にて開催中です(入場無料)。また、7月2日、3日には都内で「立体切り絵ワークショップ」も開催される予定。SouMaさんから直々に切り絵を教わることができます。
「立体切り絵作家SouMaの世界へようこそ」
http://www.souma-wkh.com/
(村中貴士・イベニア)