ところで、孫氏はかつて日本のテレビ局をも買収しようとしたことがある。
「世界のメディア王」と孫正義、テレ朝を買収!?
テレビ局の買収劇といえば、ホリエモンこと堀江貴文氏が仕掛けたニッポン放送・フジテレビとライブドアにまつわる騒動のイメージが強い。しかしホリエモンより前に孫氏も買収を狙ったことがあった。
1996年、ソフトバンクは、ルパート・マードック氏率いるニューズ・コーポレーションとタッグを組み、旺文社よりテレビ朝日(以下テレ朝)の株式21%を買い取り、事実上の筆頭株主となった。
ルパート・マードック氏といえば、映画製作における最王手との呼び声も高い「21世紀フォックス」をはじめ、イギリスの名門紙「タイムズ」ほか、世界各地のテレビ局や新聞社を抱え、「世界のメディア王」と称される世紀の実業家だ。
狙いはCSデジタル放送だったとも
ところで、なぜそんな孫氏とマードック氏は、日本の一企業に過ぎないテレ朝をターゲットにしたのだろうか。
実はマードック氏は、買収劇の直前にも来日しており、その際に「CS(通信衛星)を利用したデジタル放送を日本で展開する」という考えを明らかにしている。つまり買収劇の裏側には、テレ朝の経営権を握ることで視聴者をCSに流せる、という狙いがあったのではないだろうか。
孫氏もそんなマードック氏の考えに同調し、彼に協力したと考えられる。
失敗に終わったテレ朝買収劇
アメリカでは、ハリウッド映画や4大テレビ局の買収劇が絶えず繰り返されていることもあり、テレ朝買収劇で「日本でもそうした覇権争いが勃発するだろう」との見方もあった。
しかし結局のところ、日本では敵対的買収と騒がれ、翌97年に朝日新聞社が全ての株式を買い取ることで、テレ朝は元サヤに収まる形となり、買収は失敗に終わったのだった。
もしも孫氏のテレビ朝日の買収に成功していた場合、テレビの歴史はどのように変わったのだろうか。
(ぶざりあんがんこ)
孫正義の焦燥 俺はまだ100分の1も成し遂げていない