1980年代後半~90年代、小室哲哉がプロデュースするサウンドが主流派を占める中で、ヴィジュアル系バンドも全盛期を迎えていたことをご存じだろうか。逆立てた長い髪に派手なメイクのヴィジュアル系バンドは、熱狂的ファンに支えられ、ある種のムーブメントを引き起こす存在であった。

およそ四半世紀を経て、ヴィジュアル系バンドメンバーは、現在どのような姿になっているのだろうか。「V系」とひとまとめに呼ばれるが、バンドごとに違いはあるのだろうか?過去と現在の姿を比較、検証してみる。

ヴィジュアル系元祖・X JAPAN


ヴィジュアル系バンドの先駆けといえば、X(現:X JAPAN)。1989年のメジャーデビューから1997年の解散に至るまで、音楽シーンに新しい風を吹き込み多くの支持を集めた日本を代表するロックバンドである。
YOSHIKIが生み出す音楽性の高い楽曲と、Toshlが発するハイトーンボイスのマリアージュは、幼馴染みであり創立メンバーでもある2人だからこそ出せる深い味わい。また、そのルックスやライブパフォーマンスにも強いインパクトがあり、音楽だけでなくファッションや生き様までをコピーし、心酔するコアなファンを生み出した。
ビジュアル系ミュージシャンの過去と現在 あの人こんな感じだったの?

そんな彼らだが、いわゆるヴィジュアル系スタイルに身を包んでいたのはXJAPANに改名する前のX時代のこと。初期のスタイルは、カラーリングした長髪をトサカのように高く立ち上げ、歌舞伎を思わせるような派手なメイクにネイルを施し、衣装は黒を基調にハード系で統一したものだった。アメリカのロックバンド「KISS」をはじめ、多くのロックバンドやヘヴィメタルに影響を受けつつXらしい奇抜なスタイルを確立したことで、若者たちの憧れの対象として神聖化されるまでに成長した。

2007年再結成後は、衣装こそスタイリッシュな黒で統一しているものの、派手なメイクもヘアスタイルも封印されている。

ヴィジュアル系ながら堅実的イメージ・LUNA SEA


1992年にメジャーデビューしたLUNA SEA。結成当初は、Xを踏襲したような派手めのメイクとカラーリングした長髪を盛るスタイルで活動をしていたが、デビュー時にはメイクもヘアスタイルもやや落ち着いている。衣装が黒系で統一されているのは同じだ。
ビジュアル系ミュージシャンの過去と現在 あの人こんな感じだったの?

LUNA SEAといえば、すぐに思い浮かぶのはボーカルの河村隆一だろう。
甘い歌声と一見ナルシスト風のルックスで多くの女性ファンを引き付けたが、他にも女子が好みそうなイケメンメンバーが多いのも人気の秘密。
また、ギターやドラムなどの楽器の演奏技術が高いことから、音楽を志す男性からの支持も厚い。リーダーはあえて作らず、メンバーそれぞれの個性が強くて独立心が高そうにも見えるが、楽曲は全員が集まりジャムセッションによって作り上げているそうで民主主義的な一面? も垣間見える。

現在のファッションは、ダークヘアにほとんどノーメイク。衣装は黒に限らず、個性を引き立てるような遊びを取り入れた、スタイリッシュな“オトナ”スタイルが主流だ。

ロック&ポップのヒットメーカー・GLAY


1994年にメジャーデビューしたGLAY。バンド名の由来は、ロックバンドではあるが、実態はロックとポップを融合させた独自の音楽スタイルであることから、あいまいな存在=グレー(灰色)という意味で名前を決定したという説がある。(※ちなみに英語で灰色はGray)

GLAYは、ベストアルバムの売り上げ(487万枚)やライブ動員数(20万人)などで、次々と日本記録を更新したことでも知られる。広く一般から支持される彼らに、昔ながらのヴィジュアル系のイメージはあまりないかもしれないが、インディーズ時代はボーカルのTERUもばっちりメイクで長髪スタイルだったのだ。
ビジュアル系ミュージシャンの過去と現在 あの人こんな感じだったの?

デビュー後は、全員が濃いメイクをすることはなくなり、ヘアスタイルは一般男性でも真似しやすいものに変化。衣装は、ジャケット着用のクールなスーツスタイルが主流になる。後のキレイ目系ファッションの原型だろう。特にTERUのスタイルは、全国のホストたちが好んで取り入れるようになった。
こうして、GLAYはミュージシャンでありながらファッションリーダー的存在へと進化した。

印象的なロングヘアも・L'Arc〜en〜Ciel


GLAYと同じく1994年にメジャーデビューしたL'Arc〜en〜Cie(通称ラルク)も、1991年結成後からインディーズ時代は派手なメイクとヘアスタイルで活動していた。特にボーカルのhydeは、X JAPANのYOSHIKI以来の中性的な魅力を前面に出すスタイルで、ミステリアスかつ妖艶な雰囲気を演出。印象的なロングヘアも、整った美人顔のhydeにはよく似合っていた。
ビジュアル系ミュージシャンの過去と現在 あの人こんな感じだったの?

メジャーデビューからしばらくして、hydeが髪をバッサリ切ると女性ファンが急増。1998年には、活動休止の期間を取り戻すかのようにシングル3枚を同時リリースし、hydeもそれに合わせて黒髪のオールバックや金髪ツンツンヘアなどを披露してポテンシャルを示す。「私はこのhydeが好き」と選ぶ楽しみを与えられたことで、ファン層がさらに広まったように思われる。

現在のhydeは、編み込み&ドレッドのロングヘアが定番スタイルに。ファッションに関しては、初期のころからメンバー全員でそろえるというよりも、基本的にはhydeを中心に楽曲ごとに合わせたスタイルで勝負しているようだ。

他にも「MALICE MIZER」のボーカルだったころのGACKTも、派手なメイクとヘアスタイルだった。
X JAPANから始まったヴィジュアル系バンド。現在もV系と呼ばれるバンドは存在するが、そのスタイルは大きく変化している。
流行が一巡するのは30年。またいつか、あの頃のような奇抜でド派手なヴィジュアル系バンドが原点回帰で生まれてくるのか否か、今後の展開を見守りたいと思う。
(chensuik)
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