大橋巨泉が亡くなった。「昭和のにおい」のする最後の大物司会者だった。

当初から50歳でのセミリタイアを考えていた巨泉。予定よりは数年遅くなったが、1989年にはゴルフの日本アマシニア出場を目指すなどの理由から、本当に芸能界をセミリタイアしている。
このとき、巨泉が司会を務める『クイズダービー』『世界まるごとHOWマッチ』などの人気レギュラー番組は軒並み降板してしまったが、そんな中で唯一出演を続けた番組がある。

それが、89年10月スタートのTBS系『ギミア・ぶれいく』だ。
大橋巨泉は番組の進行役兼スーパーバイザーといった位置付け。ビートたけし、石坂浩二、関口宏、森光子といった超大物たちが週替わりでプレゼンターを務め、バラエティ、ドキュメンタリー、アニメ、ドラマなど、硬軟入り混じった様々なジャンルが楽しめる番組だった。

バッドエンドが定番の大人のアニメ『笑ゥせぇるすまん』


番組の目玉となったのは異色の大人向けアニメ『笑ゥせぇるすまん』。
誰もが持つ「心のスキマ」を満たしてくれる謎の男、「喪黒福造」。しかし、関わったものは自身の心の弱さや止むにやまれぬ事情から、喪黒の忠告に背いてしまう。そこに待ち受ける悲劇的な結末……。
人間の愚かさが浮き彫りになる構成、刺激の強すぎるブラックジョークに、大人の階段を上った子供も多かったのではないだろうか?
ちなみに、原作者の藤子不二雄Aによると、主人公「喪黒福造」は『11PM』時代の巨泉がモデルだそう。ただし、あくまで見た目の話である。

徳川埋蔵金を追い続けた糸井重里


「埋蔵金発掘プロジェクト」も目玉企画だった。糸井重里をリーダーとした発掘チームが、徳川幕府の埋蔵金が埋まっているとされる群馬県の赤城山を掘り起こしまくった企画だ。

眠っている埋蔵金の額は、現代で言えば200兆円相当!……とされていた。ロマンあふれ過ぎである。

シリーズ化され平均視聴率が20%を超えるなど、話題は社会現象化。自称・超能力者から最先端の科学技術まで、あらゆる方面からアプローチしたが、結果としては小判の1枚も発見されず……。
視聴者の子供たちからすると、「埋蔵金はいいから、早く『MOTHER2』(糸井重里がゲームデザインを担当した大ヒット作の続編)を出してくれ!」の声の方が多かった。

半信半疑の超能力特集 王道のクイズ王決定戦


また、埋蔵金発掘に超能力者を絡めるように、この番組では超能力をフィーチャーした企画も多かった。子供たちの超能力開発実験にクローズアップしたり、あのMr.マリックが中国の超能力者と対決したこともあった。当時はマリックを本物の超能力者と思い込む人も多かったのだから、実に牧歌的な時代である。

クイズやドミノ倒しなどの定番企画をブラッシュアップしていったのもこの番組の特徴。
特にクイズは「史上最強のクイズ王決定戦」と題して放送。シンプルなクイズのみに特化し、重厚な演出で支えることで、本格志向のクイズ番組として人気を確立。後にファミコンスーパーファミコンでゲーム化されるまでになっている。


各コーナーはプレゼンターの個性が発揮される作りでありながらも、番組全体としては“大橋巨泉カラー”でまとめあげていた印象がある『ギミア・ぶれいく』。
ニューヨーク・摩天楼の空撮で始まるオープニング、シックなスタジオセット、ウィットに富んだトーク。大人の遊びを極めた巨泉ならではの大人のエンターテイメント番組。もう一度、観たかったなぁ……。
(バーグマン田形)

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