ナンダ、コレハ。
その作品をみたとき、なんともいえない不思議な気持ちに包まれた。
一面にビッシリと書き込まれた細かい線で、その絵はできている。
何かの風景のようなものがあれば、人の顔のようなものが描かれたものもある。
よく見れば、その絵は、細かい文字のような「何か」で書かれている。
既存の文字とは違う。記号? 模様? 理解しようとすれば、混乱してしまう。しかし、引きつけられる。
ポップでカラフル、テキスタイル的に見えるような作品もある。
「宮川隆 画集『みやこ』」(リトルモア刊)の中に収められる混乱と混沌。収録された作品は、とにかく今まで見たことのない作品群である。
描き手の宮川さんは、「カンカカリャ」である。本書は、宮川さんの、カンカカリャとしての作品集。
「カンカカリャ」とは何か。
カンカカリャは、宮川さんの出身地でもある、沖縄・宮古島の霊能者のこと。
<それは、仕事でも職業でもない、ましてや宗教でもない>
本書で宮川さんは書いている。
今から20年ほど前のある日、宮川さんは、突然、カンカカリャに「なった」。
<ある日、自分のもとへ自分でないものがやって来た>
基本的には女性がなるものだが、何かに選ばれのだろうか、宮川さんはカンカカリャに「なった」。そして、自動筆記のように、手が動きだし、絵を描きはじめた。自分で描いた実感は、ない。
<発狂したと思った>
カンカカリャは、なるか、ならないか、の世界だという。根間さんという宮古島のカンカカリャに「発見」され、「なる」と決めた。
宮川さんは語る。
「『カンカカリャ』は、引き受けたその時点で、自分のことなのです。神もホトケもなく、自分しか存在しない。オカルトも神秘主義もなく特殊能力もなく、存在そのものがあるのみです。
宮川さんの本業はデザイナー。日ごろは書籍や雑誌などのデザインをおこなっている。「日ごろは全然普通の方なんですよ」と、宮川さんがつとめる出版社の担当者は言う。
降りてきた情報を受信したとき、それをカンカカリャとして、絵をしたためる。
「仕事の結果がどうなったのかは分かりません。分かるのは終わったことのみです」
作品に込められたメッセージのようなものがあるのだろうか。
「逆の意味でメッセージしかありませんが、これまでの視覚化する文化、文体とあまりにかけ離れているために、『カンカカリャ』という言葉で煙に巻いてきたことのほうが強いです」
作品の大きさは「人間より大きく包み込むような感覚になることが理想」だそうだが、実際にはA4のノートに描かれるという。
所用時間は短くて30分、長いと中断期間も含めて2年かかったものもある。
「すべては書き出してみないと分かりませんが、体が動けばあとは全てなりゆきです」
本業のデザインのほうが優先されるのだとか。
カンカカリャは、家族や親族、弟子などに受け継がれていくものではない。
<その役目は本人だけで終わる>
宮川さんの役目はいつまで続くのか。
「根間のおばあさんに言われたのですが、『生きてる間におつとめを全うしないと、また生まれ変わってもやらされるよ』と。逆にいえば、私はそれで本当に肩の荷がおりました。失敗していいんだと救われたのです。あれから20年ほどたってますが、どうなることやら」
カンカカリャの不思議な世界へ連れていってくれるガイドブックなのかもしれない。
(太田サトル)
●宮川隆さんの地元・沖縄では8年ぶりの個展が8月3日から9月5日まで宜野湾市の「カフェユニゾン」で開催される。画集の原画や未発表作品を展示予定(一部販売)。
カフェユニゾン
沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F
その作品をみたとき、なんともいえない不思議な気持ちに包まれた。

一面にビッシリと書き込まれた細かい線で、その絵はできている。
何かの風景のようなものがあれば、人の顔のようなものが描かれたものもある。
よく見れば、その絵は、細かい文字のような「何か」で書かれている。

上の作品を拡大したもの。文字のようなものがビッシリ描きこまれている。
既存の文字とは違う。記号? 模様? 理解しようとすれば、混乱してしまう。しかし、引きつけられる。

ポップでカラフル、テキスタイル的に見えるような作品もある。
「宮川隆 画集『みやこ』」(リトルモア刊)の中に収められる混乱と混沌。収録された作品は、とにかく今まで見たことのない作品群である。
なるか、ならないかの世界

描き手の宮川さんは、「カンカカリャ」である。本書は、宮川さんの、カンカカリャとしての作品集。
「カンカカリャ」とは何か。
カンカカリャは、宮川さんの出身地でもある、沖縄・宮古島の霊能者のこと。
現在宮古島にも、10人もいない存在なのだという。
<それは、仕事でも職業でもない、ましてや宗教でもない>
本書で宮川さんは書いている。
今から20年ほど前のある日、宮川さんは、突然、カンカカリャに「なった」。
<ある日、自分のもとへ自分でないものがやって来た>
基本的には女性がなるものだが、何かに選ばれのだろうか、宮川さんはカンカカリャに「なった」。そして、自動筆記のように、手が動きだし、絵を描きはじめた。自分で描いた実感は、ない。
<発狂したと思った>
カンカカリャは、なるか、ならないか、の世界だという。根間さんという宮古島のカンカカリャに「発見」され、「なる」と決めた。
宮川さんは語る。
「『カンカカリャ』は、引き受けたその時点で、自分のことなのです。神もホトケもなく、自分しか存在しない。オカルトも神秘主義もなく特殊能力もなく、存在そのものがあるのみです。
存在そのものとなって、はじめてすべての存在と同等になったと思います。そこにすべての存在は存在します」
宮川さんの本業はデザイナー。日ごろは書籍や雑誌などのデザインをおこなっている。「日ごろは全然普通の方なんですよ」と、宮川さんがつとめる出版社の担当者は言う。
降りてきた情報を受信したとき、それをカンカカリャとして、絵をしたためる。
「仕事の結果がどうなったのかは分かりません。分かるのは終わったことのみです」
本人だけで終わる役目
作品に込められたメッセージのようなものがあるのだろうか。
「逆の意味でメッセージしかありませんが、これまでの視覚化する文化、文体とあまりにかけ離れているために、『カンカカリャ』という言葉で煙に巻いてきたことのほうが強いです」
作品の大きさは「人間より大きく包み込むような感覚になることが理想」だそうだが、実際にはA4のノートに描かれるという。
所用時間は短くて30分、長いと中断期間も含めて2年かかったものもある。
「すべては書き出してみないと分かりませんが、体が動けばあとは全てなりゆきです」
本業のデザインのほうが優先されるのだとか。
カンカカリャは、家族や親族、弟子などに受け継がれていくものではない。
<その役目は本人だけで終わる>

宮川さんの役目はいつまで続くのか。
「根間のおばあさんに言われたのですが、『生きてる間におつとめを全うしないと、また生まれ変わってもやらされるよ』と。逆にいえば、私はそれで本当に肩の荷がおりました。失敗していいんだと救われたのです。あれから20年ほどたってますが、どうなることやら」
カンカカリャの不思議な世界へ連れていってくれるガイドブックなのかもしれない。
(太田サトル)
●宮川隆さんの地元・沖縄では8年ぶりの個展が8月3日から9月5日まで宜野湾市の「カフェユニゾン」で開催される。画集の原画や未発表作品を展示予定(一部販売)。
カフェユニゾン
沖縄県宜野湾市新城2-39-8 MIX life-style 2F
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