荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

もんじゃ焼きのルーツとして最も有力な”荒川区説”


皆さん、もんじゃ焼きのルーツをご存知ですか? 月島だと思ってません? 実は、私もそう思ってました。
諸説あるらしいのですが、有力なのは“もんじゃ焼きのルーツ、荒川区説”。「あらかわもんじゃ学研究会」会長の鵜飼新介さんは、このように語ります。

「『月島もんじゃ振興会協同組合』の会長さんともお話ししたのですが、実は“もんじゃ焼きのルーツ、荒川説”はかなり有力なんですね。というのも、月島は土地のつくりが埋め立て地からできているので、土地としてはもちろん荒川区の方が昔からあることになります」(鵜飼さん)

だとしても、なんで荒川区が“もんじゃ発祥の地”になるんでしょうか?
「荒川区のもんじゃを掘り下げると、駄菓子屋さんに行き着くというのが一つの有力な説になります。よって、“もんじゃ文化”の原点は“駄菓子文化”ではないのか。文献を参考にすると、荒川区には一時期124の駄菓子屋さんがあったようです。そして、もんじゃのスタートは、子どもたちが食べていた“子どももんじゃ”だと言われている。あまり具が入っていないけど、水分とソースと薄い小麦粉等で作っていた“3時のおやつ”が原点だったのではないか? そこから具が足されていき、またソース等の調味料はしょっぱいので、お酒のおつまみとして発展した“大人もんじゃ”が出来上がった……というのが現在の有力な説です」(鵜飼さん)


夏に合う”あらかわもんじゃ”を食べ歩くツアーを敢行!


ところで。「ハイサワーの日」である8月3日~31日まで「あらかわもんじゃ学研究会」と“わるなら♪ハイサワー”でおなじみ博水社が手を組み、「第一回 荒川もんじゃ×ハイサワー祭り」を同区内のもんじゃ店9店舗(日暮里、町屋など)で開催するそうです。
期間中は、地元で愛される9の名店が「ハイサワーに合う“夏にぴったりのユニークもんじゃ”」をテーマに厳選した絶品もんじゃを、博水社が開発した「荒川ハイサワー」とともにセット販売するらしいです。
そこで今回は、一足早くこのイベントを記者が体験してみました。スタミナ系の“ギョーザ風”、“グリーンカレー風”、お酒が進むホルモン入りやコンビーフ入りのメニューが楽しめる同イベントですが、その中から厳選した5店舗を一日でハシゴします!


見た目、味、香り、どれもグラタンそのものの『カニグラタンもんじゃ』


まずは、『カニグラタンもんじゃ』(セット価格1,050円)を提供してくれる「浜作小台店」からスタート!
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

これは、鉄板でグラタンを焼く新感覚もんじゃだそう。マカロニで土手を作り、チーズがたっぷり入った出汁を流しこみます。青唐辛子をトッピングするのもオススメ!
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

混ぜたら汚くなりそうな予感がしてたのですが実際はそんなことなく、具と色合いが相まってグラタンに見えてきます。香りもグラタン。これは、新感覚ですよ!
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

へらで押し付けこげを作ると、より“グラタン感”が増してきます。
そしてタバスコをかけて食べると、もっとグラタン寄りになっちゃう。まるで、「もんじゃ」というフォルムでグラタンを食べているよう!
「お客様からは『グラタンだねぇ!』『マカロニが入ってるから面白いねえ!』『簡単に作れそうだから、ウチでもやってみよう!』という反響をいただきます」(店員さん)
これは約10年前から同店で提供しているもんじゃで、若い方や女性に好まれるメニューだそうです。


もんじゃと一緒に飲むために開発された「荒川ハイサワー」


2店舗目は、『ゴーヤもんじゃチャンプル風』を提供するお店「麦の市」です。ここで博水社の田中秀子社長と合流したので、もんじゃとセット販売される「荒川ハイサワー」について伺いたいと思います。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

「何が荒川のイメージなのか考えていたんですけど『荒川と言ったら都電。都電と言ったらバラだよね』ということで、赤しそを入れてハイサワーレモンで作りました」(田中社長)
荒川区の都電沿線にはバラが植えられており、シーズンになると赤いバラが咲き誇るそう。その理由から、荒川区は“バラの街”と呼ばれています。そこで、博水社が発売する赤シソ原液『わるなら赤しそ』を少量加え、鮮やかなピンク色の「荒川ハイサワー」が完成しました。
「甘ったる過ぎたり後味がねっとりしているともんじゃが美味しくならないので、サッパリしつつもんじゃが進むような味付けに気を付けました」(田中社長)

メニュー提供時にはもんじゃっぽい雰囲気を醸すため、赤シソ原液をおちょこに入れた状態で出してくれるそうです。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた



まさに夏仕様! 『ゴーヤもんじゃチャンプル風』


では、そろそろ『ゴーヤもんじゃチャンプル風』(セット価格1,030円)をいただきましょうか。夏野菜のゴーヤと旨味たっぷりのスパムを使用した“ゴーヤチャンプル風”もんじゃで、最後に溶き卵投入するのがポイントだそう。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

このもんじゃは、「あらかわもんじゃ学研究会」の鵜飼会長に焼いていただきます。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた
左が「あらかわもんじゃ学研究会」鵜飼会長で、右が博水社の田中社長。

手際がメチャメチャ鮮やかです。さすが!
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

「このもんじゃは実が多いので、作りやすいです。
“土手”が作りやすいんですよね」(鵜飼会長)
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

おこげを作っていただくとゴーヤが香ばしくなって食べごたえがあるし、そのまま食べてもフレッシュで美味しい! ふわふわ卵は新食感だし、まさに夏仕様。スイスイと食べれちゃいます。
「これは10年くらい前から提供しているメニューです。初めは夏場限定のもんじゃだったんですけど、お客様から『これは絶対美味しいんで、一年中メニューにしてくれないか?』って頼まれて通年のメニューになりました」(店員さん)


タイ料理からヒントを得た『グリーンカレーもんじゃ』


3店舗目に伺うは、『グリーンカレーもんじゃ』(セット価格1,000円)を提供する「友民荒川本店」です。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

グリーンカレーのもんじゃと言われても想像がつかないのですが、具材にはトマト・パプリカを使用し、ココナッツミルクで焼き上げるらしい。言わば、“エスニック系もんじゃ”と呼べるでしょうか?
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

「長年お店をやってると、何食べても『これ、もんじゃに使えないかな?』って考えちゃうんですけど、このもんじゃはタイ料理からヒントを得て開発しました」(店員さん)

ここでは店員さんにもんじゃを作ってもらったのですが、その際に“あらかわもんじゃ”の特徴を教えていただいています。
“あらかわもんじゃ”って、ヘラでもんじゃの上からカチカチやらないんです。あれをやるとねっとりして、美味しくなくなっちゃうんですね。カチャカチャやる人は、荒川ではあまり見ないですねぇ。具は元からちょうどいい大きさになっているので、やる必要もないんです」(店員さん)
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

それにしても、焼き始めた瞬間からグリーンカレーの美味しそうな匂いがして来ますよ。そして、へらでカチカチさせない。上から青のりをかけ、いただきます!
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

事前には「ちょっと辛め」と言われていたのですが、個人的にはちっとも辛くないです。丁度いい。
キャベツもシャキシャキしてるし、エビ、イカ、たけのこといった具材も大好物。焦げた部分をへらですくい取って口にすると、グリーンカレーがもんじゃに昇華してケミストリーが起こったというか。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

超美味しいです!


餃子以上に餃子! 『餃子もんじゃ』


4店舗目は、その名も『餃子もんじゃ』(セット価格1,050円)を提供する「浜作もんじゃ会館」に伺います。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

具材に、ギョーザの皮とニンニクとニラたっぷりの餡が入ったボリューム満点もんじゃ。ラー油をかけながら“中華風”にして食べるのがオススメだそうです。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

これ、焼き始めた瞬間に強烈な餃子の香りが漂います。そして、見てください。本当に、餃子の具そのまんまだから! というか汁の中に餃子の皮の生地(粉)も入ってるので、言わば“包まない餃子”です。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

これを一口食べると、笑っちゃうくらいダイレクトに餃子。皮で1クッション挟まないので、餃子以上に餃子だと感じられますよ!
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

とは言え、鉄板に押し付けてこげを作れば一次元上に到達した印象がある。餃子ともんじゃが融合し、見事に1アップ。やはり、ここでもケミストリーが起こりました。個人的には飲みの途中、男子同士でガッツリ食べるのがピッタリなもんじゃだという気がします。



味も見た目も女子ウケ抜群! 『梅干しもんじゃ』


さて、最後は『梅干しもんじゃ』を提供してくれる「110(イトウ)」にお邪魔します。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

これは、梅干しを丸ごと一個使ったもんじゃ焼き。暑くて食欲が落ちる夏でも食べられる、さっぱりテイストのもんじゃです。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

「これは酸っぱいし、好みの分かれるもんじゃだね。梅干し好きな人か、酒のつまみで頼む人が多いよ」(「110」のご主人)

このもんじゃもご主人に焼いていただいたのですが、出来上がりはあっという間でした。何せ梅干しなので、あまり火を通さない方がいいらしい。
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

「梅干しで塩分強いから、味付けは塩でね。ソースを入れちゃうとケンカしちゃうから。下味は酢を入れただけだよ。梅干しの塩分と酸っぱさを食べてもらいたい。お客さんは『すっぱくていいねえ!』って言ってくれるよ」(「110」のご主人)
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた

味も見た目もふわっとした、女子ウケしそうなもんじゃでした。さっぱりしてます!

というわけで、本日の“ハシゴもんじゃ”は終了。正直、4~5店目辺りから「もう食べれないかな……」というテンションになりかけてたのですが、いざお店に来て匂いを嗅いでしまえば蘇っちゃう。
食べそうな気がしてくるし、実際に完食してます。


荒川区のもんじゃは、“ガラパゴス化”して成長したもんじゃ

それにしても、荒川には雑多なもんじゃがいっぱいありますね!
「荒川のもんじゃにはルールが無いんです。そもそも、ルーツである駄菓子屋さんでは、子どもたちが自分たちのように好きに食べてますもんね。そういう意味で言えば、原点は多様です」(鵜飼会長)

そして“あらかわもんじゃ”の種類が雑多な理由は、もう一つあるらしい。
「荒川区のもんじゃ店って、個々それぞれが独立した形で盛り上がっているんです。極端な話、向かい合ったもんじゃ店がお互いの店の内容を知らないくらい“横のつながり”がなかったりします。だからこそ、ご主人のこだわりがメニューや店作りに出る。荒川区のもんじゃ店を1店行っただけじゃ、実は“あらかわもんじゃ”の魅力はまだまだわかりません。同じ『もんじゃ店』という括りにはなるんですが、同じ味は無いですし、同じもんじゃは出てこないです」(鵜飼会長)
要するに、“あらかわもんじゃ”は「ガラパゴス状態で成長したもんじゃ」だと言えるのです。

ちなみに、今回のようなイベントが第2回、3回……と続いていく可能性はありますか?
「もちろん、あると思います。初回である今回は9店舗に参加していただいたのですが、荒川区には約60のもんじゃ店があります。行く行くは10、20、半分、全店舗参加となれば嬉しいなと考えています。
定期的に、末永く開催したいと思っていますよ!」(鵜飼会長)
荒川区のもんじゃ焼き店をハシゴしつつ、荒川のご当地ハイサワーを飲んできた


荒川区に来てみると、JR、都電など至るところに駅があることに気付きます。そして、駅を降りたらすぐもんじゃ店があったりする。
イベント期間中は目当てのもんじゃ店でもんじゃを楽しみ、その店を出たら「あっ、あそこにもあった!」と飛び込みで次なるもんじゃ店へ駆け込む。……そんな“もんじゃのハシゴ”をしたら、メチャメチャ楽しいと思います。
(寺西ジャジューカ)
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