日本にサッカー熱の灯が点った1990年代。バブルと言われるほどのJリーグ人気に沸く一方、“ドーハの悲劇”の手厳しい洗礼を浴びた記憶は今なお鮮明だ。

これを機に、日本でもサッカー関連のグッズ類が様々発売され、大きな市場となっていたのも御存知の通り。子どもたちの間では、有名選手のカードがおまけに付くJリーグチップスなどに人気が集まっていたわけだが、サッカーの母国イギリスでは選手たちをかたどった手のひらサイズのフィギュアが急速に人気になっていった。それが「コリンシアン・フィギュア」だ。

バッジオ、マテウス、ロマーリオ…名選手がフィギュアに


英コリンシアンが最初のフィギュアシリーズを発売したのは1996年頃。
デビット・ベッカムやロイ・キーンらイングランド・プレミアリーグやイングランド代表の有名選手をフィギュア化。さらにロベルト・バッジオ、ローター・マテウス、ロマーリオ、ディエゴ・マラドーナら欧州リーグの人気者が次々とフィギュアとなって登場するや、爆発的な人気となった。

日本が初出場した98年フランスワールドカップのあとには、ペルージャに移籍した中田英寿やアーセナル入りした稲本潤一など日本人選手のフィギュアも登場。これを契機に日本国内でも人気に火がつき、日本限定のJリーガーモデルも発売、ラモス瑠偉などもフィギュア化された。

表情も髪型も本人そっくり!


コリンシアン・フィギュアの魅力はまず、実物の選手の特徴を巧みに捉えている点があげられる。ヘアスタイルやヒゲの形など、表現が何かと細かい。

さらに、一人の選手だけでもアウェイユニフォームや代表ユニフォームなどバリエーションも豊富。バロンドールを受賞した選手に至っては、授賞式用のスーツ姿までも作られるという凝りよう。
シーズンによってユニフォームのデザインが変われば、当然それにも対応。モヒカン刈りのベッカムやおにぎりヘアが話題になったロナウド(ブラジル)など、コロコロ髪型を変えた選手にもできる限り対応していた。
まさにコレクションマニアのツボを狙った商品展開と言えた。

また、プレミアリーグの強豪やワールドカップの優勝チームのイレブン一式セット(監督まで付くことも)やコリンシアン公式ファンクラブ会員限定フィギュアなど、様々な展開を図っていった。

10倍以上のプレミアものも


ただしこれらは、追加生産なしの限定販売というのが大原則。そのため、発売が告知されるやあっという間に完売となり、一体1000円前後の市販価格に対し、人気選手によっては数万円のプレミアが付くことも少なくなかった。
2001年には、スタンダードのプロスターシリーズより一回り小さいマイクロスターシリーズがリリース。日本では日韓ワールドカップの頃、コカ・コーラの景品にもなり、これが相乗効果となりコリンシアン人気はバブル的頂点に至った。

しかし、08~09年シーズン発売のプロスターズシリーズ40を最後に、コリンシアン社は突如販売打ち切りを発表してしまう。高騰するサッカークラブの契約料に対応しきれなくなったなど、いくつかの憶測が囁かれたが、これを機に人気は一気に収束。現在でもネットオークションでの出品は時折見られるものの、どれも在庫処分の様相を呈している。
(足立謙二)

コリンシアン プロスターズ・シリーズ37 中村俊輔(セルティック/HOME)
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