「ヤッさん〜築地発!おいしい事件簿〜」(テレビ東京系)第5話が放送された。残すところ後1話。

南野陽子のトラック運転手が最高「ヤッさん〜築地発!おいしい事件簿〜」5話

お師匠様のシノケン(笹野高史)がピンチということで、ヤッさん(伊原剛志)とタカオ(柄本佑)は、龍子(南野陽子)のトラックで菱切海岸へ向かった。それにしても“龍子(タツコ)・南野陽子・トラック運転手”なんていう絶妙なセンスなんだろう。

菱切海岸へついた二人は、宿無しであるシノケンが海岸沿いに立てたコテージが近々強制撤去されるという話を聞かされる。納得のいかないヤッさんは、シノケンの漁師時代の盟友・田所(モロ師岡)の元を訪ねるも、シノケンが密漁グループの手引きをしていると疑われており、コテージを撤去せざる負えないという事情だった。ヤッさんは当然のように密漁グループを捕まえようとするが、なんとその真犯人は…

明らかになったヤッさんの過去


今回の注目ポイントは、ついにヤッさんが自分の身の上話が明らかになったことだ。他人の身の上話には、ありきたりありきたりとさんざん怒鳴り散らしてきたヤッさんだが、果たして当の本人の身の上話はありきたりだったのだろうか?

元々ヤッさんは、都内に5店舗を持つ人気料亭のオーナー兼総料理長だった。そこに眼を付けたある男に共同経営を持ちかけられ、さらに店は大きくなっていく。
ヤッさんはマスコミに時代の寵児と持て囃されていた。そんなある日、その男に紹介された出資者がヤクザだったと週刊誌に取り上げられてしまう。ヤッさんの知らないところでその男は、悪事を働いていたのだった。

記事が出て立場が悪くなると、その男は金を持って逃げてしまう。ヤッさんは必死で釈明したが、全てが無駄に終わってしまう。ヤッさんを持ち上げていたマスコミも、手の平を返してバッシングをし始めた。
その中の一人のジャーナリストは、ライバルの老舗料亭から金を貰っていたという。

従業員の生活の為に店を守ろうと、ヤッさんは資産家である父親に頭を下げに行くが、ヤッさんが本妻の子供ではないことを理由に追い返されてしまう。そしてヤッさんは死に場所を求めて彷徨い、菱切海岸へと辿りつく。そこで師匠であるシノケンに出会ったのだった。

今までの身の上話とリンク


今までヤッさんに怒鳴り散らされてきた登場人物の身の上話は、全てヤッさんが経験してきた過去とリンクしていた。

職を失い一文無しで彷徨っていたタカオとオモニ(板谷由夏)。自分の私利私欲の為にある事ない事書き立てたフリーライター・ナカシマミキ(佐々木希)と、人気ブロガーの食才人(児嶋一哉)。
悪いビジネスマンに踊らされた東雲軒の中尾(宮川一朗太)。ミサキ(山本舞香)と、福寿司の二代目(北見敏之)三代目(中尾明慶)の親子の仲違い。

ヤッさんは絶望的とも言える過去を背負って今を生きている。ありきたりな身の上話と怒鳴り続けてきたのは、そんな事で後ろ向きになっても仕方がないという事を伝えたかったからだろう。

ヤッさんも普通の人間でした


もう一つ注目したいのは、お師匠さんに再会してからのヤッさんのキレが微妙に悪くなる演出と演技だ。いつも威張っているヤッさんが少しだけ弱弱しく見えるシーンがいくつかあり、なんだかムズムズしてしまう。
ここにきてヤッさんの新たな一面が垣間見えた。

密漁の真犯人に渾身の「ありきたりな身の上話はそれだけか!」を言い放つも、「ホームレスに何が分かる!」と言い返されて黙ってしまうヤッさんは可愛かった。その後のシノケンと真犯人のやり取りに介入出来ないヤッさんも良かった。その横でもっと何も出来ないタカオの希薄な存在感も印象的。

ヤッさんの人間味が出て来たのが最終回前だった事は残念。今まではミステリアスでカッコいいヤッさんだけだったが、良い意味で底が見えてきた。
欲を言えば、ちょっとカッコ悪いヤッさんをあと2、3話は見たかったけど、こればかりは仕方ない。

最終回は二時間スペシャル。ヤッさんのミスで築地のみんなが騙されてしまい、ヤッさんは築地を去ることに…。果たして、最終回にして初のタカオの見せ場は来るのか?ヤッさんと築地の運命は?

初めて観る人も大歓迎のシンプルなストーリー。最終回だけでも面白いはずだ。
(沢野奈津夫)