脚本:西田征史 演出:松園武大

クイズです
胸焼けしたのはどっち?
・星野が常子を抱きしめた場面。
・赤羽根がステーキを食べてる場面。
本題です
大樹が具合悪いと聞いた常子(高畑充希)が血相替えて星野(坂口健太郎)の家に行くと、青葉の誕生会が催されるところだった。
常子に会いたい青葉が嘘をついたのだ。
常子と向かい合う坂口健太郎の猫背がいいシルエット。
涙のあとは、楽しい誕生会。まるで本当の家族のような4人。
帰っていく常子を追いかけて、妻への後ろめたさがあった。子供たちにはそんなの関係ないようです。などと言う星野。そして、奥さんを愛しているだろうからご迷惑じゃないかと思っていたと遠慮がちな常子を抱きしめる。
嗚呼、亡くなった加奈子のことは、星野も子供たちも忘れられないわけじゃないんだなあ。3年経ったんだしって感じなのかなあ。しょんぼり。
義父・弓岡柳生(志賀廣太郎)に再婚をすすめられて、いろいろ考えたのかもしれないが、そこは描かれない。賢明な視聴者は、星野が激しく葛藤したことを想像できるだろうという信頼感から省略しているのかもしれない。
でも、本来、朝ドラは、朝の支度をしながらでも観られるものだったはず。バタバタしている人間や、想像できない人間にももう少しだけ親切設計にしていただけないものだろうか。
せめて、青葉と大樹のどちらかを、亡くなった母が忘れられないキャラにできなかったか。前を向く生き方と、過去に縛られる生き方と、ふたつの心理をふたりの子どもに各々託すことは。
空にはきれいな月が。でも、満月ではなく、ちょっと欠けている。
それは一部の視聴者の心のようにも見えた。
帰宅した常子は、鏡を観ながら黒髪をとかす。封印していた「女」が解放されていくような表情にドキリ。
20歳くらいの頃、初恋を体験して、その後、男っけなしだった常子の心理は、いかようにも描けて作家の腕のみせどころだと思うのだけれど、そこは[中略]しちゃって、常子は電気釜の商品テストに邁進する。
赤羽根憲宗(古田新太)は「あなたの暮し」を恨んで何やら動き出す。
初期のレビューで書いたことがあったが、古田と高畑は舞台・歌謡ファンク喜劇「いやおうなしに」(15年)で父娘役を演じている。つまり、ドラマも終盤に来て、もうひとりの「とと」が登場したみたいなものである。
そう、ブラックととの登場だ!
ダースベーダー的な感じで常子に迫ってほしい。さしずめ花山(唐沢寿明)は橋爪功じゃなくてハンソロか。
130回も楽しみです。
(木俣冬)