日本映画界を席巻した角川映画
ところでこの「REX 恐竜物語」は、あの「角川映画」として知られる。角川映画といえば、1976年の第1作「犬神家の一族」以来、「戦国自衛隊」や「セーラー服と機関銃」など、長きにわたって日本映画を席巻していた。この角川映画を先導していた人物こそ、角川書店の社長であり映画監督でもある角川春樹である。
メディアミックスの第一人者・角川春樹
角川春樹は映画、文庫本、レコード、テレビを連動した宣伝作戦を実践するという、メディアミックス戦略の第一人者として知られる。つまりは、現在は当り前となっている常套戦略の産みの親。彼の慧眼は驚くものがあると言えるだろう。
しかしそんな順風満帆の折に起きたのが、コカイン密輸事件だった。
衝撃的だった角川春樹の逮捕
1993年8月29日、当時51歳だった角川春樹は、コカイン密輸事件にかかわったとして、麻薬取締法違反などで逮捕されてしまう。90年に公開された角川映画「天と地と」が成功したことで、90年代も幸先のよいスタートを切りながらの、まさかの不祥事。角川自身も角川書店社長の座を追われ、角川書店はもちろんのこと、映画界全体にも大きな衝撃を与えたのだった。
2ヵ月で22億円を記録したが打ち切りに…
さて「REX 恐竜物語」は、角川自身が脚本と監督を務めたほか、ムツゴロウさんこと畑正憲の原作だったり、当時の人気子役・安達祐実の映画デビュー作だったりと、公開前から話題を集めていた作品。そうしたこともあり、上映後はたった2ヵ月で22億円の売り上げを誇り、93年のランキングでは2位を記録した。
しかし、逮捕の影響によって全国各地で相次いで途中打ち切りに……。配給元である松竹にとっても大きな打撃となってしまったのだ。
(ぶざりあんがんこ)
※イメージ画像はamazonよりREX恐竜物語