数年前、出川哲朗がナイナイ岡村とラジオで共演した際、「おまえが喋りのセンスで笑わせたことあるのか?動きで笑い取ってるだけだろ!」と言い放ったことが話題になりました。
はじめに断っておくと、これは一種のプロレス。
プライベートでもよく食事に行く旧知の仲だからこそできる、照れ隠しのニュアンスも含まれた過剰な愛情表現なのです。

こうした暴言の吐き合いは、2人が番組を共にする度に繰り返されており、出川もそこまで本気じゃないことは明らかなものの、実際、今も昔も岡村のトークに、軽妙さや冴えのようなものはありません。
長年続けているオールナイトニッポンでも、展開される話の内容といえば、番組や芸能人の裏話的近況報告と世間に対するボヤキが大半。
しかし、かえってそこが親近感の沸くポイントでもあり、安心して心地よく感じられるのです。その安心感こそが、20年以上もオールナイトニッポンのパーソナリティとして支持され続けた理由なのでしょう。

ナイナイ岡村の本分は動き芸!


そもそも、話芸は岡村の本分ではなく、本来は動きで魅せるタイプの芸人。中学時代から嗜んでいるというブレイクダンスのスキルと、天性の身体能力によって、これまで数々の番組でキレッキレのパフォーマンスを披露してきました。
特に名高いのがめちゃイケの『オファーがきましたシリーズ』。SMAP、モーニング娘。、劇団四季、EXILEなど……。毎回、持ち前のセンスと努力によって振り付けをマスターし、大勢のファンが見守る中で完璧にメンバーの一員となってダンスを踊るのです。そのエンターティナーとしての心意気たるや、見事という他ありません。

『ASAYAN』のトーク収録中、ハエを捕まえようとするも…


そんな「動きで魅せるエンターティナー」としての自覚が災いしたのでしょうか。1999年5月、当時ナイナイがMCを務めたテレビ東京の人気番組『ASAYAN』で、事件が起きます。

この日はつんく♂がプロデュースしていたハロプロユニット『太陽とシスコムーン』がゲスト出演しており、スタジオでトークを繰り広げていたのですが、イマイチ岡村が集中していません。どうやら、時折視界に入る「ハエ」が気になってしょうがなかったようです。
「ごめんな、今、なんかもう虫がブワーンって飛んでいったから……」と、明らかに意識が散漫している様子の岡村。その後も目でハエの動向を追い続け、「今だ!」というタイミングが来たのでしょう。マイクを左手に持ち替え、右手をグルンと素早く振り回します。その動作があまりにも大振りだったために、勢い余って自分自身の体も反転。右腕から勢いよく転倒しました。

右肩を骨折、スタジオを退場する岡村隆史


あまりの豪快なこけっぷりに、悲鳴と爆笑と拍手に包まれる観客席。その喧騒を尻目に、岡村は右腕を押さえてスタジオの隅にうずくまります。「アホや、あいつアホやぞ」。いつのもように冷静に相方を弄る矢部。
ですが、その言葉に反応する余裕もなかったようで、岡村は苦痛に顔を歪め、「…ちょっと続けといてくれへん…?」と絞り出すように言うのがやっと。
腕を押さえながら、会場の外に出て行くシーンまでがしっかりと放送されたのです。

その後の診断で右肩を骨折していることが判明し、入院を余儀なくされた岡村。動き芸を全身全霊でやっていたがゆえの悲劇。50歳手前になり、だいぶ落ち着いた今の彼からは考えられない珍事といえるでしょう。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりナインティナインのオールナイトニッ本 vol.2 (ワニムックシリーズ 135) (ヨシモトブックス)
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