9月末に惜しまれつつも幕を閉じたNHK朝の連続テレビ小説(以下、「朝ドラ」)「とと姉ちゃん」は、平均視聴率が今世紀の朝ドラの中で3位という、華々しい結果を残した。
過去の朝ドラ作品中、最高の平均視聴率を記録したのは、前作の「あさが来た」。
その平均視聴率は、23.5%という驚きの数値だ。流行語大賞も生み出した「あまちゃん」が20.6%にとどまっているのが意外だが、「とと姉ちゃん」が敗れた平均視聴率第2位の作品はもっと意外だ。

平均視聴率第2位の「さくら」


その作品というのが、2002年前期の「さくら」。平均視聴率は23.3%であり、「とと姉ちゃん」と僅差。
この作品はハワイ生まれ日系4世のヒロインが、日本での生活でギャップを感じながらも中学校の英語指導助手として奮闘する物語で、21世紀の人間関係と和の精神に焦点を当てるという、新しいテーマに挑戦したことが吉と出たようだ。
ヒロインの高野志穂を最近テレビで見ることは少なくなったが、実は「さくら」には中学生時代の長澤まさみも出演していたりする。

90年代の朝ドラ 高視聴率作品は?


では、90年代の朝ドラの中で高視聴率を記録したのはどんな作品なのだろうか?
1990年以降、最も視聴率の高かった作品は、桜井幸子・泉ピン子主演の「おんなは度胸」(1992年)。平均38.5%という、今では考えられないような数値を記録した。温泉ブームに取り残された老舗旅館を、義理の母娘が支えるという物語だ。
ちなみにこの作品には、まだ今ほど知名度が上がる前の香川照之が、泉ピン子に思いを寄せる板前役で出演していた。

次作の「ひらり」は石田ひかり主演で、平均36.9%という、こちらもなかなかの高視聴率を叩き出した。また、「ひらり」の主題歌はDREAMS COME TRUEの「晴れたらいいね」だったのだが、この作品以降、歌入りの主題歌が定番となっていき、松任谷由実の「春よ、来い」、山下達郎の「DREAMING GIRL」、Kiroroの「Best Friend」、いきものがかりの「ありがとう」など、誰もが口ずさむような朝ドラ主題歌を世に出していったのだ。

90年代「朝ドラ」の最低視聴率は


一方、90年代の朝ドラで最低視聴率だったのが、「走らんか!」という作品で、平均20.5%。これでも、視聴率20%以下が当たり前になってきた2000年代以降からみれば、低すぎることもない気がするが……。
この作品では、三国一夫が主演をつとめ、中江有里・菅野美穂がヒロインを演じた。
長谷川法世の青春漫画『博多っ子純情』をモチーフにした青春ドラマだが、セーラー服を着て博多弁を喋る、若き日の菅野美穂にときめいた男性も少なくないだろう。
現在はプライベートでも一児の母となって好感を集めている菅野。放送中の朝ドラ「べっぴんさん」では、愛情深く健気な母役を好演。ナレーションもつとめており、まだまだ人気はとどまりそうにない。

その後の「朝ドラ」演出に変化も


「走らんか!」は、朝ドラには珍しく男性が主人公。視聴率が上がらなかったためか、以後18年間、2014年の「マッサン」(玉山鉄二とシャーロット・ケイト・フォックスのW主演)に至るまで、男性が主人公の作品が制作されることはなかった。
「走らんか!」では朝ドラの視聴率低下傾向に歯止めをかけることはできなかったため、次作「ひまわり」「ふたりっ子」において、せりふ付きの脇役の出演が多く挟み込まれたり、有名人が本人役でスポット出演するなど、演出構成やキャスティングに新たなスタイルを起用するきっかけになったようだ。

1960年スタートという長い歴史を持つ朝ドラ。時代の移り変わりや、テレビの役割の変化の影響を受けて、視聴率も左右されるのは否めない。しかし、子役だった俳優が大人になって別の作品に出演したり、のちにブレイクする俳優が脇役で出演するなど、長く続いているからこそ将来への楽しみも秘めているシリーズだということは間違いないだろう。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonよりカンタビ
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