脚本:渡辺千穂 演出:安達もじり

10話はざっとこんな感じ
女学校を卒業後、結婚したすみれ(芳根京子)が妊娠。だが、七ヶ月目に入ったとき、夫の紀夫(永山絢斗)に召集令状が来る。
いい味出してる紀夫くん
この回も驚きの展開の速さ。
再放中の「ごちそうさん」(13年)では、主人公の未来の夫が登場したものの、まだまだ少しずつお互いを知る段階。それに比べて、「べっぴんさん」は女学校を卒業して、結納して、お母さんの形見のウエディングドレスでお式をして、そして妊娠!
だが展開が速い代わりに、登場人物の会話はゆっくりしている。これ↓なんて最たるものだ。
すみれ「あの・・・」
紀夫「はい」
すみれ「赤ちゃんができました」
紀夫「ほんまですか」
すみれうなづく
紀夫席を立ちバルコニーへ
紀夫「あーーーー(叫ぶ)」
すみれ「どうしたの」
紀夫「喜んでいるのです ぼくは喜んでいるのです」
紀夫の不器用さが愛おしい。
結婚式でもすみれのことをまだ直視できない紀夫。第一話ですみれを見たとき、微笑み分量がなぜか少なかったのは、顔に出せない人設定だったのだなと納得した。
ということは、「なんかな、なんかな」のすみれとは似たもの夫婦ってことだ。でも、彼女は自分のことに気づいていないらしく、麻田(市村正親)に思いを表に出すのが下手な人もいる、すみれも心のなかでは強いものをもっていた、と諭される。
結婚したのは昭和18年、すぐさま昭和19年3月・・・に時が飛んで、まさかもう生まれたのか! と思ったらさすがに妊娠7ヶ月だった。フェイントかけられたー。
と、そこへ召集令状が・・・。
9話に続いて、時計の音が効果的に使われていた。音だけじゃなく時計の画もところどころに。
良子(百田夏菜子)が例の15歳年上夫からもらった素敵な腕時計も出てきた。
恋と結婚が駆け足なのは、そういう価値観もあることのようでおもしろい。人生のなかで恋や結婚の比重がこれくらいの人だっているよね、と思う。それに、恋や結婚が自由意志によるものではなかった時代なのだろう。
そんなふうにレールに乗って結婚したとはいえ、夫は妻が朝寝坊していても文句ひとつ言わない。15歳年上だという良子の夫も「何するのも、ええよ、ええよっていう人」なうえ、お金持ちらしい。ちょっとうらやましくもある。
(木俣冬)