メインステージの全てを覆うほどの大きな幕。東京・国立競技場には、会場を埋め尽くすファンの姿。
ステージにかけられた幕がはがれ落ち、映像が流れると、ものすごい歓声があがる。
上からでも下からでも、どっからでもかかってこい!と構えてその時を待つ……。
あっ、そこから登場しますか!!
SMAPのDVD年末までに全部レビューその7。歌わせた中居が「うるせぇ」と一言
国立競技場公演の前日、香取が出演する「スマステーション」(テレビ朝日)では、国立競技場の特集をしていた。オンエアをみていた木村は、「こんな光栄なことだとは、きのうの“スマステーション”をみるまで気づかなかったよ」とMCで話した。

SMAPとイク?62日間


「今までコンサートをやってきて、最初は厚生年金会館とかから始まって、次は武道館、次はホール、アリーナ、スタジアム……というふうに少しずつ会場が変わっていったわけですよ。そうやって会場が変わるたびにひと区切りという感じがしたけれど、今回、国立競技場でやれたことも、まさにその“区切り”のひとつでしたね」(ポポロ/2015年12月号)
香取がインタビューで語ったように、このツアーでSMAPはまた一つ記録を刻んでいた。

2005年7月30日からスタートしたSMAPのコンサートツアー『SMAPとイク? SMAP SAMPLE TOUR FOR 62DAYS.』は、5大ドームに加えて日産スタジアム、国立競技場でも行い、約115万人を動員した。しかも、国立競技場での単独アーティストによる公演はSMAPが初。また一つ快挙を成し遂げた年だった。

DVD発売は12月、『SMAPとイッちゃった! SMAP SAMPLE TOUR 2005』とタイトルの一部が変わっている。

雨が降っても〜国立競技場で3時間半のSMAPライブ


オープニングから瞬きする暇もないくらい、色んな仕掛けが仕込まれているSMAPのライブ。5人が登場したのは、アリーナ席の通路だった。両サイドにファンが座る客席の間の通路をゆっくりと歩いた。

『「ファンを近くに感じたい」というメンバーの意向で、アリーナの通路から入場』(ザテレビジョン/2005年9月23日号)
2年ぶりのコンサートということもあり、ファンとふれあう時間を優先させていたのだ。

『BANG!BANG!BANG!』からスタート。『ダイナマイト』、『夏楽園〜clap your hands〜』と夏にぴったりの楽曲が続き、木村が香取の頬にキスするシーンも早々に見られて、テンションがあがる。
まるで楽園にいるような気分にさせてくれるステージが続いた。
「上の方も見えてるよー!」
いつも上の席を見上げて、まっさきに声をかけてくれる草なぎくん。こういう気遣いがたまらなく嬉しい。

国立競技場だけのセットは15mもある2本の火柱。ここから炎があがるとビル13階の高さに達するという。(ザテレビジョン/2005年9月23日号)

サイケな柄のゆるい衣装からビシッと揃いのスーツ姿まで、ステージのコンセプトごとに変わるメンバーの衣装を見ているのも楽しい。

ちなみに香取は、「今回、僕は海賊の衣装がいちばん好きかなぁ」
(ポポロ/2005年12月号)

海辺を走る少年の映像からスタートした中居のソロ。真剣な表情でピアニカを弾いている。スーツ姿の男性が座り込んでピアニカ……。
ここから盛大にどんちゃん騒ぎをするのかと思いきや、続いて座ったのはピアノの前。ピアノを引きながら歌う中居くん。2004年放送のTBSドラマ『砂の器』で演じた和賀英良が再び!
続いてガシガシ踊るダンスナンバー、赤いベアトッップドレスに着替えてS嬢や巻き舌の親父に扮したり目まぐるしく変わる。
女装では、がっつりと入ったサイドスリットから美脚を覗かせた。カッコいいシーンで終わらせないのが中居くん。
後にスタッフから、中居のソロの時間にトイレに行く人が減ったと褒められたそうだ。

SMAPキス事情2005


『BANG!BANG!BANG!』では、お決まりの木村から香取の頬にチューのシーン。これを真似て、草なぎと稲垣がキスすることになった公演があったという。
この二人を中居と一緒に前に押し出した香取は、
「吾郎ちゃんがアカペラで“男前だよ、剛くん〜♪”って歌ったときに、つよぽんが吾郎ちゃんのほっぺに“プチュ”ってして(会場が)“ギャー”って(笑)」
(ポポロ/2005年12月号)

やんわりとしたチューが気持ち悪かったと振り返る。

「木村くんだからこそありえるみたいな感じですかね」
いまや木村と香取のチューを見なければ締まらないほどだが、始まりは覚えていないそうだ。このツアーの最終公演で、より強烈になったほっぺにチューについて、想像以上に真剣に考えていた慎吾ちゃん。複雑な心境を語っている。

「毎回、あの歌のときは“男前だよ〜♪”って歌うちょっと前から、頬のあたりが気になってるんです。いっぱい汗かいても悪いなぁと思って、踊りながらちょっと頬のあたりの汗をふいたりして……。途中からそんな自分に気づいて、“俺、何やってるんだろう”って思いましたよ(笑)あれっていつからするようになったのかなぁ。
最初からではなかったと思うんですけど、今では木村くんをちょっと待ってる自分がいて、“今日はくるかな?”“もししてくれなかったらそれも寂しいな”とか……。あと“木村くんは僕にしたあとに、自分の口をふいたりしてなんのかなぁ……”なんて、そこまで気にしながら踊ってます。されたあとの僕の表情は、驚きももちろんいまだにあるんだけど、“あー、今日もしてくれた”っていう喜びの表情もあったりするんですよね(笑)」
(ポポロ/2005年12月号)

まるで恋する乙女のような発言。ステージで抱き合ったり隙あらばいちゃいちゃする二人をこれからも見ていたい!

そんなかわいらしいエピソードを明かした慎吾ちゃん。ソロステージでは表情をがらりと変えて、ファッショナブルでセクシーなステージを披露した。
黒いレースをふんだんにあしらったオールブラックのコーディネートで登場。長身の香取にはロングジャケットがよく似合う。
ソロ曲『Shigusa』R&Bテイストの楽曲にあわせて大胆な腰振り。エロさの中にエグさがないのは香取のセンスだろう。ジャケットを脱いで女性ダンサーと一緒に踊りながら進んだ花道は、ランウェイのよう。バラエティで見せる顔とは全く違う香取の姿。セクシーでおしゃれなステージはぜひ見て欲しい!

2年ぶりとなった『SMAPとイク? SMAP SAMPLE TOUR FOR 62DAYS.』
。コンサートが無事に終わり、最後はシャンパンファイトで終えたと話す。

「最後は無言でメンバー同士握手しましたね。“あー、コンサート終わったなー”って感じで、それぞれがシャワーを浴びにいこうとしてる状況のなか、汗びっしょりの中居くんがやってきて、“お疲れー”って感じで手を伸ばしてて、その後はみんながそれぞれ握手を始めて……。ああいうのは、ほかではなかなか見られない光景ですよ」
「また必ず、最高のライヴをやるので、そのときまで楽しみに待っててください!!」
“最高のライヴ”とは、日頃から積み重ねたものや、自信がなければなかなか言えない言葉だろう。ステージに対する香取の本気と自信、チャレンジ精神が伝わってくる。

Disc2
後半の、『Let It Be』からはロックなステージ。ギラギラとした照明がメンバーを照らす。ドラムに近寄る中居くん、ギターを囲んだりしながら自由に動き回る。『俺たちに明日はある』、『Dandy Darlin’』と進むにつれて、会場のペンライトやうちわの振りも激しくなっていく。最後はド派手な特効でひと区切り。アルバム曲に限らず、『夜空ノムコウ』や、『がんばりましょう』、『君色思い』と90年代の曲も交えたセットリスト。
再び『BANG!BANG!BANG!』。ファンに歌わせた中居が「うるせぇ」と一言。近所のお兄ちゃんに言われている気分。こんなふうにして、ファンとの距離を縮めてくれているSMAP。初の国立競技場なのに、身近に感じる。最後には屋外ならではの特別な演出もあった。

映像には、東京公演のラストも収録されている。
「初心忘れるべからず!」と木村の声で、デビュー曲の『Can’t Stop!!-LOVING-』。イントロが流れると、ラストとは思えないほどのすごい熱気が伝わってくる。
「SMAPは必ず来年、また帰ってきます!!」
リーダー中居の、頼もしい宣言に涙が出た。生で聞いていた人は嬉しかっただろうな。

最後にMCでの会話を。
中居 ねえねえ。1コ聞きたいことがあんだけど。木村の携帯の着信音、聞いた事ある? 「夕刊見る?」って。
木村 え? ユー・ガット・メールだろ! メール来ましたよって英語だよ。
中居 ありがとう!すっきりしたわ。
木村 ここで聞くなよ!
(ザテレビジョン/2005年9月23日号より)

(柚月裕実)

【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
これまでSMAPが見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。