何せ彼は、『上を向いて歩こう』でビルボード3週連続で1位を獲得しています。
今から半世紀以上前にリリースされた『明日があるさ』
『明日があるさ』が最初に発売されたのは、今から半世紀以上前の1963年12月1日。青島幸男が作詞した、意中の女性に想いを告げようにも告げられない、内気な青年を描いた歌詞は、坂本のほがらかかつ小気味の良い歌声で唄われることによって、その情景や青年の表情までもが浮かんできます。
当時80万枚以上のセールスを記録したのも、それだけ、歌自体にパワーがあったからに他なりません。
缶コーヒー「GEORGIA」のCMソングとして話題に
時代は流れ、この名曲に再びスポットライトが当たったのは、2000年8月。缶コーヒー「GEORGIA」のCMソングとして使用された時でした。
スーツ姿のダウンタウン・浜田雅功がビルの屋上で真昼の空を見上げながら、例の陽気なメロディに合わせて「あし~たがある~さ、あっすがある…」と歌唱するシーンから始まり、藤井隆(トイレで手を洗うサラリーマン)→山田花子・仲間由紀恵(受付嬢)→間寛平(深夜残業する会社員)→花紀京(タクシーに乗る重役)→松本人志(タクシー運転手)→ココリコ(客先で土下座する営業)→東野幸治(会社から出てくる会社員)……と、仲間以外は吉本オールスターともいうべき面子が次々と登場。皆、一様にあの曲を口ずさんでいるこのCMは、たちまち話題となります。
その後シリーズ化され、一つの物語のように放送されたこのコマーシャル。浜田の元同期(清水圭)が嫌味なベンチャー企業の社長として彼の前に現れたり、新しい上司としてフランス人が赴任してきたりと、ちょっと「うっ」となるような状況に陥りながらも、最後はジョージアを飲んでホッと一息。きっとどうにかなるし、明日があるさ!……とでも言いた気に、あくまでポジティブなサラリーマンの姿を描いたこのCMは、さながら、働く社会人の応援VTRのような機能を果たしていたものです。
『明日があるさ』のヒットを加速させた背景とは?
「GEORGIA」のCMが放送された20世紀末といえば、平成大不況の真っ只中。会社倒産やリストラが社会問題化し、1998年からは自殺者数が史上初めて3万人を超えるなど、列島に暗い影が覆っていた時期でした。
そんな先の見えない時代だからこそ、調子外れに、まるで高度成長期のノーテンキな気分をそのまま唄ったかのような『明日があるさ』には、当時のリスナーの疲れた心を癒す何かがあったのではないでしょうか。
そんな時代の空気を逆手にとって流行歌となった『明日があるさ』は、ウルフルズバージョンと、CMに登場した吉本興業の面々を中心に結成されたRe:Japanバージョン、そして、坂本九の元曲が次々とリリースされ、空前のリバイバルヒットを記録。
前年に「ニッポンの未来は、Wow Wow Wow Wow!」と、さらにノーテンキな歌詞で大ヒットした、モーニング娘。の『LOVEマシーン』と共に、世紀末の世を盛り上げた曲としても、この坂本九・至極の名曲は、永遠に語り継がれていくことでしょう。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより明日があるさ THE MOVIE ― マイエナジーセレクトトラック (CCCD)