X JAPANのYOSHIKIと、L'Arc〜en〜Cielのhydeの共演が話題だ。10月15日に幕張メッセで行われた音楽イベント「VISUAL JAPAN SAMIT」で実現したもので意外にも両者は初共演となる。

「VISUAL JAPAN SAMIT」は日本最大級のビジュアル系バンドのフェスであるが、L'Arc〜en〜Cielは90年代にビジュアル系という呼称をめぐり、ある事件を起こしている。

爆笑問題の発言が原因?


1999年4月19日、この日、NHKホールで『ポップジャム』の収録が行われていた。『ポップジャム』は1993年から2007年まで続いた若者向けの音楽番組である。10代を中心に観客を募り、定期的にNHKホールで収録を行っていた。
この日の出演者は、L'Arc〜en〜Cielのほかエレファントカシマシ、観月ありさ、UAといった面々。司会を務めるのは人気絶頂にあった爆笑問題の2人だ。

問題となったのは演奏前のトークの部分である。この頃、ラルクは新作のプロモーションでメンバー全員が坊主頭となる広告が話題となっていた。それを受け会場には、いかにもビジュアル系然とした長髪のカツラが用意され、それをかぶった爆笑問題から「ビジュアル系のみなさんから見てどうですか?」といった質問がなされた。

tetsuyaが自著で語った真相


この発言に不快感を示したのか、ラルクは2曲を演奏する予定であったところを、1曲で切り上げて会場をあとにしてしまう。もっとも怒りを現したのは、バンドのリーダーを務めるベーシストのtetsuyaだった。演奏が終わるやいなや、ベースを投げつけ舞台袖に引き上げたとも言われる。

このことが「ラルクが“ビジュアル系”発言に激怒」といったニュアンスで報道されてしまった。実際は、その場で1曲を演奏したのちに予定されていたもう1曲の収録を行わなかった、というのが真相のようだ。

むしろ自分たちの扱いに関して、しっかりとNHK側に伝えなかったラルク側のスタッフへの不満があったと、tetsuyaは著書『哲学。』(ソニーマガジンズ )で回想している。

「ビジュアル系」に侮辱的意味合いも


90年代の音楽シーンにおいてビジュアル系は一種のブームであった。その言葉には侮蔑的な意味合いが込められていたのは確かだろう。「男なのに化粧をしている」「見た目重視で肝心の演奏が下手」「歌詞と世界観が大げさ」といったものだ。X JAPANが髪を逆立て『天才たけしの元気が出るテレビ!』(日本テレビ系)において「早朝ヘビメタ」を披露していたのは象徴的。
ビジュアル系は一種のキワモノ、イロモノとして扱われていたのだ。さらに、ビジュアル系の名のもとに、音楽性や個性が異なるバンドが十把一からげとされてしまう風潮もあった。

苦労人バンドなL'Arc〜en〜Ciel


L'Arc〜en〜Cielは下積みが長い苦労人バンドである。1991年に結成後、1994年に「眠りによせて」でメジャーデビューを果たすものの、当初は高いセールスは記録できなかった。ようやく人気が出てきた1997年2月には、ドラムのsakuraが覚醒剤所持の現行犯で逮捕されバンドは活動休止状態に追い込まれる。
半年後の同年10月にシングル「虹」で復帰を果たし、以降「winter fall」「HONEY」「snow drop」といったヒット曲を連発する。ポップジャム事件も新曲「HEAVEN'S DRIVE」のプロモーションの一環で出演した際に起こったものだった。


2000年代に入り、多くのビジュアル系バンドが解散や活動休止を余儀なくされたのとは対照的に、2016年現在、ラルクは活動を継続している。自らの着実な活動によってビジュアル系に向けられる嘲笑をはねのけたといえるだろう。
(下地直輝)

※イメージ画像はamazonよりTWENITY 2000-2010 Original recording remastered
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