以前、、たくあんを挟んだ衝撃のローカルパン「サラダパン」を紹介したが、さらに長い歴史を持つ正統派な「サラダパン」を長崎で発見した。
地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

場所は長崎きっての歓楽街として知られる、「思案橋」入口。
夜遅い時間帯だったこともあり、ネオンがあやしく煌めいていた……。
地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

思案橋の入口に「ぱんのいえ」というパン屋さんがあり、「本家サラダパン」の看板に目がとまった。パンをトレイにのせている「コック坊や」のイラストがなんともかわいい……。「長崎名物サラダパン」と書かれた貼り紙もあり、猛プッシュしているようす。
地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

入店してみたところ、 レトロなパッケージに包まれた「サラダパン」を発見! 紙製の袋に「コック坊や」がグリーンで印刷されている。「本家サラダパン」(180円)のほか、「たまご王子さま」(230円)の2種類があるようだ。


オーナーの森田さんにお話を伺ってみたところ、この場所には大正6年創業の「東洋軒」というパン屋さんが長らくあったのだが、残念ながら平成26年3月に閉店。しかし、長年愛されてきた味がなくなってしまうのは悲しすぎる……! という県民の声におされ、「ぱんのいえ」がそのレシピを引き継ぐことになったのだとか。看板に、「東洋軒直伝」とあったのはそのためだったのですね……。

滋賀の「つるやパン」は戦後の創業だったが、「東洋軒」はそれより早い大正時代。日本が鎖国していた江戸時代に唯一、世界との窓口だったのが長崎の出島。コーヒーがいち早く入ってきたのも長崎だし、おそらくパン食が広まるのも早かったのだろう。



「東洋軒」から受け継いだレシピを大切に受け継ぐ


地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

奥が「本家サラダパン」、手前が「たまご王子さま」。袋から出してみると、それぞれパンの形状も違っていた。2種類とも、「東洋軒」さんから受け継いだレシピで現在もつくり続けているそうだ。

「本家サラダパン」には、手づくりのポテトサラダと、昭和っぽさが漂う赤いプレスハムが入っている。真っ赤なハムって、最近あまり見なくなりましたよね……。鳥取にあるメーカー「大山ハム」のものだそう。
「たまご王子さま」には、コッペパンにたまご、レタス、きゅうり、からしマヨネーズが挟んである。
ゆでたまごは長崎産の「太陽卵」で、1個のパンにつき1個分が使われている。

「じゃがいもを蒸すための蒸し器、マッシャーなども、東洋軒さんから受け継いだものを使わせていただいています。パンを入れる袋、ビニール袋、パンを留めるブルーのテープまでそのままです(笑)。『東洋軒』さんの時代には、中高の購買部で販売していたこともあったらしく、懐かしさから買い求めてくださる方も多いようですね」と森田さん。

なお、ポテトサラダは朝からじゃがいもを丁寧にむき、当日に蒸して、すべて手づくりしているそう。季節によって産地の異なるじゃがいもを使うため、糖度などを確認しながら、スタッフ全員で味を調整しているという。
味付けのからしマヨネーズも、酸味のきいたものを3種類ほど工夫しながら混ぜて使っているそうで、なんともやさしい味わい。

「塩こしょうを加えないなど、昔ながらのレシピを忠実に再現しています。現代風の味にすることは簡単なんですけど、私たちは縁あって東洋軒さんから受け継いだ、伝統の味を守ることを大切と考えていますので……」とのことだった。


飲みの締めに「サラダパン」を食べる人も


なお、歓楽街の入口という場所柄もあり、「ぱんのいえ」はなんと、平日は午前3時まで、土日は朝の4時まで営業しているというのでビックリ!(「東洋軒」は24時間営業だったらしいのでさらに驚いた)。

飲み会の帰りに家族へのお土産や朝ごはん用などのほか、飲み屋のお姉さん方への差し入れとして20~30個単位で買う人も珍しくないそうだ。さらに、飲みの締めとして「サラダパン」を食べる人もいるとのことで衝撃!!
飲んだ後にラーメンやおにぎりなど炭水化物が欲しくなることがあるが、サラダパンが同じ役割を果たすこともあるのですね……。


長崎には「東洋軒」と「ますさきのパン」の2大サラダパンが存在した


なお、実は長崎にはもう1軒、公会堂前にある「ますさきのパン」というお店もサラダパンをつくっているらしい。
こちらは大正7年創業の老舗で、特製からしマヨネーズを使ったコールスロー&角ハムを挟んだもの。

現在、ネットで「サラダパン」を検索すると、上位にはぼ滋賀県のサラダパンしかヒットしないといっても過言ではない状況だが、長崎が誇る正統派な「サラダパン」もぜひ知ってほしい!
長崎を訪れる機会があったら、この2大サラダパンを食べ比べてみるのもいいかもしれませんね。
地元民が飲みの締めにも食べる長崎名物「サラダパン」とは

余談だが、長崎では交番までもが、教会風の異国情緒漂う佇まいになっておりステキだ。入口のピンクのランプとステンドグラス風の意匠に誘われ、特に用はないが入ってみたくなってしまった……。
(まめこ)