「東京スタジアムの皆様。これから誠に勝手ながらトイレ休憩にさせていただきます。
今回のライブはDrink!Smap!というタイトルにしたため沢山のDrink Smapを飲まれたと思います。ごゆっくりとお手洗いなさってください」

アイドルのコンサートらしからぬアナウンスが流れる。トイレ休憩ということは、もしかしてあの方のステージでは……。
SMAPのDVD年末までに全部レビューその9。2002年のあの事件を超えて…涙で歌えなくなった中居
CAP:ツアーラストまで販売されたSMAPオリジナルドリンク。実はデビュー前の1989年にも『SMAP』ドリンクが発売されていた。

「SMAP'02“Drink! Smap! Tour”」


2002年の7月からスタートした『SMAP'02“Drink! Smap! Tour”』。
同年7月に発売の、2年ぶりのアルバム「SMAP 015 / Drink! Smap!」をひっさげてのツアーは、全国12ヶ所をまわり24公演を行った。このツアーでは観客115万人を動員。1ツアーあたりの国内最多記録を樹立した。

(参照/@DIME)⇒

アルバムのジャケットデザインを担当したのは佐藤可士和。リリース時には、SMAPのオリジナルドリンクを全国販売というユニークな試みも行われた。
当時の様子をスポーツ紙が伝えている。
『この日、東京・渋谷には大量のSMAP自販機や壁画が登場。「今すぐ買って」(中居)「海外で飲むドリンクの味がする」(木村)(中略)とメンバーもお気に入り。道行くギャルにも「みんな持ってるからビックリした」と好評で、発売元のキリンビバレッジによると1日で約600万本出荷され「驚異的な数字」だという。

(参照/スポニチアネックス

1日の出荷数がなんと600万本! 動員数やセールス枚数と並んでSMAPはこんなところでも記録を残していた。

オープニングではメンバーのアニメーション映像が流れた。襲ってくる敵と戦う殺陣のシーンが続く。映像を飛び出してステージ上に現れても、ライトセーバーのような剣で敵を倒していく。最後はスモークに隠れてしまったメンバー。再び現れると、白いスーツ姿の5人がいる。
『Theme of 015』がスタート。
ちなみにメンバーの歌声が聞けるまで7分04秒だった。また、今回はステージの合間に流れるジャンクション映像に、メンバーが1人ずつ登場する。計5パターンが流れた。しかしSMAPは白い衣装が似合う!

「今日は寒いけれど、最後までおもいっきり楽しんでくれ!」
11月の野外。7月からスタートしたツアーもラストを迎える頃には冬にさしかかっていた。
「楽しむべ!!みんなで幸せになろうぜー!」中居のストレートな言葉が嬉しい。

『SHAKE』の曲中、木村と草なぎが腕を組んで歌っているその一方で、水分補給をする中居。それを発見して注意する香取と稲垣。逆ギレした中居が二人に水をかける。歌の最中だってば!
アルバムで曲を聴くのもいいけれど、ライブDVDでメンバーの行動を追っているだけでも楽しめる。

後半。
『SMAP Rock You』からスタートしたロックなステージ。ギターを手にした木村と稲垣が、一つのスタンドマイクを交代で使って歌っていく。ロック調のアレンジをした『青いイナズマ』や、1992年のアルバム「SMAP 002」収録の『真夜中のMERRY-GO-ROUND』と懐かしい曲も聞けた。
曲間に「剛、いけー!」中居の合図で、草なぎは花道で連続バク転、最後にバク宙をきめてみせた。達成感に満ちた表情の草なぎ。その隙に中居は、草なぎの脱いだ靴をガムテープで冊に巻き付けている。
……中居さん歌は!?

トイレ駆け込み問題2002


中居のソロがはじまる前に場内アナウンスが流れ、スクリーンにはこんな注意書きが表示された。
「東京スタジアムの皆様。これから誠に勝手ながらトイレ休憩にさせていただきます。今回のライブはDring!Smap!というタイトルにしたため沢山のDring Smapを飲まれたと思います。ごゆっくりとお手洗いなさってください。」
続けて、これから真剣に歌うから、どうしてもという方はごゆっくりと…ということが伝えられた。
アイドルのコンサートで、前代未聞のアナウンスが流れる会場。前年の公演では、中居のソロがはじまるとトイレに行く人が続出したようで、相当気にしている様子だった。
大きなステージに1人、スーツ姿の中居が登場した。
「ふーん、それでもトイレに行く方、いらしゃるんですね……」
スタッフの愛か、それとも悪意か。席を離れてトイレに行こうとするファンの姿が映る。そんな様子をみて一言、
「そんな、トイレに行こうとしてる人、トイレに行く人に一言!いまが一番混んでるぜ!」
自虐的なトークからはじまった中居のソロステージ。寸前までにこやかにトークをしてたのにラブソングを歌いあげる。このギャップがたまらない。
続いて中居主演の映画「模倣犯」の映像を経て、ヘソだしセーラーの衣装でモーニング娘。『ザ ピ~ス!』を披露。マッチョなダンサーも登場して、最後はとんでもない結末を迎える。とにかく手が込んでいる中居ソロ。トイレに行くのはもったいない!

『世界に一つだけの花』振り付けはKABA.ちゃん


ファンのよびかけではじまった購買運動の甲斐もあり、トリプルミリオン目前といわれる『世界に一つだけの花』。
作詞・作曲は槇原敬之で、元々は2002年7月発売のアルバム『SMAP 015/Drink! Smap!』に収録されていた。発売翌年、2003年1月から放送の草なぎ剛主演のドラマ「僕の生きる道」の主題歌に起用されると、シングルカットの要望があり『世界に一つだけの花(シングル・ヴァージョン)』としてリリース。NHK紅白歌合戦では大トリで披露、セールスもダブルミリオンを達成した。

楽曲の振り付けを担当したのがKABA.ちゃん。
「実はね、あの振り付けをするときスゴク悩んでいて、なかなかアイデアが思いつかなかったんですよ。そんな煮詰まってるときに木村くんがアドバイスしてくれたんです。“お客さんと一体になって踊れるようなものがいい”って」
(週刊女性/2003年9月9日号)
ヒントをもらうなりすぐに女子トイレに飛び込み、トイレにある前身鏡をつかって振り付けを考えたとインタビューで明かしていた。
KABA.ちゃんとSMAPの出会いは2000年のツアー。ダンスの依頼をもらったものの、その時はまだ素の自分をカミングアウトしていなかった。悩み抜いた上、素の自分で接したところメンバーからは何の反応もなかった。
「仲良くなってからアタシ彼らに聞いてみたの。“どうしてオカマなの?って聞かないの?”って。そしたらみんな同じ意見で、“男であれ女であれ、仕事をするうえで性別なんて関係ないじゃん”ってフツーにいわれて」
(週刊女性/2003年9月9日号)
人を選ばずに誰でも両手を広げて迎えてくれるような、SMAPのスタンスを感じるエピソード。そんなSMAPだからこそ歌える楽曲だと改めて思う。

本編ラストの曲は『世界にひとつだけの花』。
「みんなの存在がすげーあったかったぜー!」木村から順に挨拶をして、会場に出現したDrink Smapの缶の中へ入っていく。香取「ありがとうー!みんな最高!!」最後は稲垣。「みんな今日は素敵な思い出ありがとう!来年もまたこの場所で会いましょう」。来年を約束してくれるこの言葉は、ファンにとってどれだけ嬉しい言葉か。

涙で歌えなくなるツアーファイナル


DISC2の最後は、11月3日ツアーファイナルの模様が収録されている。
暗闇のメインステージに照明があたると5人の姿があった。木村から挨拶がはじまる。
「今年から11年目のスタートということで、年数は関係なくいつもコンティニューでスタート地点に立っていようと思います」
ゆっくりと言葉を発して最後はピースサイン。
続いて稲垣。「去年、いまごろ僕はメンバーからも、そしてみなさんからも離れ、寒い冬を1人過ごしていました。とっても寒かった思い出があります…」
前年は不祥事により活動を自粛していた稲垣。ファンへの感謝の言葉を丁寧に伝えて、最後は深々と頭を下げた。
「去年はコンサートのときにゴローちゃんがいなくて、正直ゴローちゃんんのことふざけんなっていっぱい思いました…」
香取は目を潤ませながら、自分の気持ちを素直に、自分の言葉で伝えていく。
「1人抜けて4人でやってみて、すごい寂しかったし、そんで今年は5人でできて最後までくることができて、やっぱり僕はSMAPが好きなんだなって改めて思ってます」
最後は笑顔で「愛してます!」

「みなさん、本当にありがとうございました」
少し間を置いて口を開いた中居。表情を引き締めて、リーダーの顔つきになっている。
「去年、突然ゴローちゃんがああいう形でいなくなったとき、僕に限らず残った4人はSMAPの終わりを、もしかしたらむかえなきゃいけないんじゃないかとか、これ以上やっていけないんじゃないかとか色々と考えさせられる部分もありました」
事件を受けて葛藤したことや稲垣が復帰した喜びを語り、ファンが温かく迎えてくれた事に対して感謝の気持ちを伝えた。
今後について「必ず5人でライブができれば」おだやかな表情とやさしい口調なのに、強い意志が伝わってくる。

中居が作詞を担当した『FIVE RESPECT』は、メンバーの特徴をとらえた歌詞とソロのパフォーマンスで完成するメンバー紹介の曲。そこに出てくる「ピンチはチャンス」の一節がこの頃のSMAPにぴったり。

挨拶を終えると『BEST FRIEND』をライブ初披露。ソロパートでは涙があふれて歌えなくなってしまった中居。タオルで顔を覆った。香取も草なぎも涙をためている。上を見上げる稲垣。遠くをみつめていた木村も、一瞬言葉につまって歌えなくなる。

「たとえばコンサート中盤でバラードやってしんみりしてたとしても、最後は多いに盛り上がって『やっぱりライブは楽しい!』って思って帰ってもらいたいって思うんですよ」(ポポロ/2001年12月)
ツアーの前年のインタビューでこう語っていた中居。

その言葉どおり、ラストは涙をふいて「もう一曲いくぞーーー!」と叫ぶと『がんばりましょう』を歌った。最後は、ツアーラストならではの行事シャンパンが登場。この翌年はグラスでおとなしく飲んでいたけれど、2002年はシャンパンファイトで大暴れ! シャンパンやら水やらを掛け合ってステージがとんでもないことになっている。ひとり開封できずにもがいている草なぎ。キャラがブレなさすぎ!
11月の夜の野外でずぶ濡れになって、寒い寒いと叫びながらステージを飛び回るメンバー。なぜかパンツ一枚になっている人もいる。『SMAP'02“Drink! Smap! Tour”』では、ちょっとやんちゃなSMAPに会える。

(柚月裕実)

【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
SMAPがこれまでに見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。