
近年、「冬アイス」が注目を浴びている。一昔前までは、「真冬にアイスなんか食べて、風邪引くよ!」などと、親に叱られそうなイメージがあったが、現在では、冬にアイスを食べていても、いたってフツー、むしろ「この贅沢モノ!」と言われるまでになったように思う。
そして、冬のアイスは、なぜかおいしく感じるものである。アイスといえば「夏」なのにもかかわらず、なぜ冬のほうがおいしいのだろうか。日本アイスマニア協会代表理事のアイスマン福留さんに聞いてみた。
アイスはなぜ冬のほうがおいしく感じるのか
アイスは、もちろん食べるとひんやりする。そんなモノをなぜわざわざ人々は真冬の寒い時期に食べようとするのか。体を冷やすだけではないか。しかし、アイスマン福留さんは、次の3つを指摘する。
●冬は溶けるのを気にせずゆっくり楽しめる
「夏はすぐにアイスが溶けてしまいますが、冬は溶けるのを気にせずゆっくり楽しめます」
●冬アイスは目的が「プチ贅沢」で大人向けの商品が多い
「そもそも、夏と冬では、アイスを食べる目的が異なります。夏は、涼を取る目的、つまり体温を下げるために食べられるのが一般的。一方、冬は『プチ贅沢』としてアイスを楽しむ傾向があり、大人向けにつくられた高価格帯の商品が多いです。こうした違いから、冬はより贅沢なアイスを選んで食べるため、おいしいと感じるのではないでしょうか」
●メーカー側がコストをかけられる
「冬にプチ贅沢を求める人々が増えれば、高価格のアイスが売れるようになります。するとアイス製造メーカーさんたちは、アイスの『素材』に対して、よりコストがかけられるようになります。素材にこだわれば、当然、アイスのおいしさのレベルも上がります」
夏と冬とでは、アイスが溶ける時間差により、味わえる時間にも差が出る。
アイスのおいしさを決めるのは何?

アイスマン福留さんに、冬アイスのどこが魅力なのかを聞いてみたところ、「素材にこだわった濃厚な味でしょう。食感も大事ですね。」という答えが返ってきた。ところで、このアイスの濃厚さの基準や食感、素材の違いというのは具体的に何を指しているのだろうか。
「まず、アイスのおいしさは『オーバーラン(空気の含有量)』によって随分変わってきます。例えば、プレミアムアイスクリームと呼ばれる高級アイスは、一般のアイスと比べて含まれる空気の量が少なく、食べたときのボディー感(ずっしりとした感じ)があります。しかし、その分、乳原料も多く使われるためコストは高くなります。一方、空気が多く含まれているとふわっとした軽い食感になりますが、その分食べごたえはやや乏しくなります。冬アイスは高価格帯の商品が多く、コストもかけられるため、空気の含有量の少ない濃厚なアイスが多い傾向があります」
ふわっとした食感のアイスも決して悪くはないが、冬に多く登場する高級アイスが濃厚でおいしく感じるのは、アイスに含まれる空気の量が関係しているようだ。
「濃厚さを左右する要素のひとつとして、アイスに使われている『乳成分の量』があります。
また、冬アイスの定番フレーバーとして『チョコレート』がありますが、最近では、チョコレート原料のカカオ豆の産地や種類にこだわったフレーバーや、高級チョコブランドとコラボをして付加価値を高めたアイスも多く発売されています」
乳成分や素材などにこだわることで、アイスの味に差が生まれるようだ。大人をターゲットにしたコストをかけられる冬アイスは、素材や産地にこだわった上質な商品が多く、ブランドとコラボしたものも多く発売される。
ちなみに、アイスマン福留さんによれば、今年は洋菓子とアイスを組み合わせたハイブリッドスイーツ系のアイスが流行っているという。例えば、セブンプレミアムの『バターが贅沢に香るクッキー』。マダカスカル産のバニラビーンズを使ったバニラアイス(アイスクリーム規格)を、フランス産の発酵バター使用、隠し味にメキシコ産オレンジはちみつを使ったクッキーでサンドしている。これも素材にこだわった一例といえそうだ。
年々、おいしさのレベルが上がっている冬アイス。12月になれば、各コンビニチェーンやメーカーによる冬アイスの新発売ラッシュがやってくるという。今年はどんなプチ贅沢な冬アイスが登場するのか、ぜひウォッチしてみよう。
(石原亜香利)

取材協力/アイスマン福留さん
アイス評論家 / 日本アイスマニア協会代表理事。
http://www.conveniice.com/