いよいよ年末、かつて“大晦日といえば格闘技”という時代があった。その後、格闘技ブームはものの見事に去ってしまったが、今年の大晦日はフジテレビが格闘技大会「RIZIN」を5時間にわたって生中継するという。
再び格闘技ブームが巻き起こるかどうか注目だ。

格闘技ブームの起爆剤となったのは90年代から始まった「K-1」だと言って間違いないだろう。アンディ・フグ、マイク・ベルナルドらスター選手を擁する立ち技格闘技のブランドで、96年にフジテレビのゴールデンタイムに進出、97年には三大ドームツアーを成功させた。

とんねるずの番組から生まれた格闘ゲーム


K-1とフジテレビの結びつきは強く、96年からは情報番組『SRS』をスタート。だが、それ以前にK-1がお茶の間に浸透するきっかけを作ったのが、とんねるずのバラエティ番組『ラスタとんねるず’94』の目玉企画「ジャイアント将棋」だ。

「ジャイアント将棋」とは、石橋貴明(貴王)と木梨憲武(憲王)がそれぞれ将棋の駒に見立てた格闘家たちを操り、ゲームで勝敗を決するという企画。
ゲームは、相手を土俵の外に落とせば勝ちの「スモウ」、特製ヘッドギアと大きなグローブをつけて相手のカプセルを割る「ボクシング」、高さ4メートルの巨大な格子にぶらさがって相手のボールを落とす「ウンテイ」、泥の中でレスリングを行う「ドロレス」など。
バラエティらしい演出はあるが、格闘色の強い競技が多かった。

ボクシング世界王者にプロレスラー、そしてK-1戦士!


「ジャイアント将棋」の最大の特徴は、出場した選手の豪華さである。まず、プロボクサーは渡辺二郎、渡嘉敷勝男、輪島功一、井岡弘樹ら、なんと全員が元世界王者というラインナップ。ついには現役王者の薬師寺保栄も出場した。

レスラーは、“関節技の鬼”藤原喜明、“初代タイガーマスク”佐山聡、“みちのくの英雄”ザ・グレート・サスケ、“モンゴルの怪人”キラー・カーン、“破壊王”橋本真也らが登場。女子レスラーは豊田真奈美、井上貴子、井上京子、キューティー鈴木ら現役トップ選手が次々と登場した。

そしてポイントとなるのが、ボクサーやレスラーと同格、あるいはそれ以上の存在として出場した格闘家たちだ。
第4局(将棋なので単位が“局”)から出場したのが“鉄人”アンディ・フグ。同じくK-1でおなじみ角田信朗とキックボクシング(ボクシングのルールを変更したもの)で対決した。
これは明らかに石井和義館長とフジテレビによるK-1のデモンストレーションだった。その他、“拳獣”サム・グレコ、“中量級最強戦士”金泰泳も出場している。

超絶豪華「ジャイアント将棋インテグラル」


94年9月、『ラスタとんねるず’94』の最終回で放送された「ジャイアント将棋インテグラル」(2014年のネオトウキョウで開催される大会という設定だった)の豪華さは圧巻だ。

貴王側が和泉修(芸人枠)、豊田真奈美、渡辺二郎、ザ・グレート・サスケ、ジェラルド・ゴルドー、神取忍、アンディ・フグ。
憲王側がよゐこ濱口(芸人枠)、井上貴子、輪島功一、藤原喜明、マイケル・トンプソン、ライオネス飛鳥、スタン・ザ・マン。

ジェラルド・ゴルドーは当時スタートしていたアルティメット大会(UFC)で“最凶”の名をほしいままにしていた強豪選手。マイケル・トンプソンは初期のK-1で活躍した極真空手の猛者。スタン・ザ・マンは“キックボクシング界のタイソン”の異名を持つ選手で、アンディ・フグとのボクシング対決はファンにとって“夢のカード”だった(96年にK-1で対決が実現している)。

これらの面々が「UWFのテーマ」に乗せて登場するのだから血が沸騰しないわけがない。梶原しげるによる煽り実況は『グラップラー刃牙』の「最大トーナメント」選手入場シーンに影響を与えていると思う(「最大トーナメント」編は95年11月発売の21巻よりスタート)。『クイズタレント名鑑』で行われていた「ガチ相撲トーナメント」も「ジャイアント将棋」から影響を受けているはずだ。


石橋貴明、格闘家を次々と撃破!


「ジャイアント将棋インテグラル」は、憲王側の猛攻で手駒を失った貴王がたった一人で奮戦。井上貴子、藤原喜明、ライオネス飛鳥を連続して撃破し、さらにマイケル・トンプソンをスモウで破るという快挙を成し遂げた(石橋は低空タックルが異様に上手かった)。最後は重量級のスタン・ザ・マンの前に屈したが、負けた石橋は本気で悔しがっていた。

バブル崩壊直後とはいえ、まだバラエティ番組の予算が潤沢だった時代であり、そこにK-1勃興期のタイアップという条件が重なって実現した夢の企画だった。根強いファンから復活を期待されているが、予算の削減を進める現在のテレビで実現は難しいだろう。
それにしても22年前の「ジャイアント将棋」に出場し、今年大晦日の「RIZIN」にも出場する神取忍はちょっと凄すぎる(「ガチ相撲トーナメント」にも出場していた)。
(大山くまお)

※イメージ画像はamazonよりゴールデン☆ベスト とんねるず~THE WORLD OF TUNNELS EARLY BEST OF TUNNELS(SHM-CD)
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