同駅では2013年4月19日にも、また、13年3月19日にはJR長津田駅で、12年12月19日にはJR横浜駅で同じ時間帯に同様の事件が発生している。
それぞれの事件の関連性は不明だが、通勤ラッシュ時に女性ばかり狙うといった卑劣きまわりない共通点を持つ事件には、強い憤りを感じざるを得ない。
ラッシュ時の電車内で被害を100%防げる方法はない
こうした事件から身を守るにはどうしたら良いのか。
一般社団法人日本防犯学校・女性防犯アナリストの桜井礼子さんに聞いた。
「ラッシュ時には、乗車できてもその場所から動けず、カバンも人の間に挟まったまま動かせない状況になりますよね? そんな状況下では、残念ながら100%防げる方法などありません。先日も、女性が電車内で髪を切られた事件がありましたが、それを防ぐには、髪を切られないようにまとめて帽子に入れるなどしかないですし、足を切られないためにはズボンに鉄板でも入れるしかない。でも、現実的ではないですよね。となると、できればラッシュ時の電車を避け、早めの通勤・通学にし、空いている電車に乗るようにするくらいしか対策はないと思います」
狙われるのはたいてい背後からであるため、「開く頻度の低いほうの扉を背にして壁になるかたちで立つ」のは有効だというが、ラッシュ時には自分の思うポジションに立てないことも多い。
気になるのは、電車内の切りつけに対し、周りが気づかないのかということ。
「満員電車内では、カミソリやカッターなら、背の高い男性でない限り、さほど身を屈めず、手だけ動かして、周りに気づかれずに女性の太ももあたりを切ることは可能でしょう。また、被害者も、満員のときは周りと体が密着し、強く押されたり引っ張られたりしてあちこち痛い状況なので、『何か当たっている』『チクチクする』といった感覚で、すぐに気づかないのだと思います」
電車内で狙われにくくするには
完全に防ぐことはできない事件であり、被害に遭った人は本当に不運でしかない。しかし、「狙われにくくする」工夫はあるという。
「痴漢被害も同様ですが、実は狙われやすさには、あまり年齢は関係ありません。それよりも『おとなしく、騒がなそう』『俯き加減で静か』『やや地味』などの印象の人が狙われることは多いですね。
また、そうした外見的特徴以上に大切なのは「常に警戒心を持っていること」だそう。
「例えば、田舎のほうですと、『家に人がいるときはカギをかけなくても良い』などと考えているお宅がありますよね。でも、家の中でも外でも、今の世の中、絶対に安全なんてことはない。常に危機意識を持つことは必要です。混んでいる車内でも、常にアンテナを立てていれば、『後ろの人、なんか気持ち悪いな』などと感じることはあります。また、そういった警戒心を持っている人は周りにもそうした感じが伝わりますから、わざわざ狙おうと思う人は少ないと思います」
鉄道会社が車内やホームに防犯カメラを設置すれば、犯罪が減少する可能性は高いし、ホームドアが全駅に設置されれば、突き落としなどの事件も少なくなるとは思う。
しかし、すぐに自分でできる対策としてはまず、「完全に防げる方法はない」と思ったうえで、常に警戒心を持つこと。こうした事件を家族などとも話して共有すること。そして、この恐怖・許せない事件を一過性のこと、他人事と思わず、忘れずにいること。
嫌な世の中だとは思うが、自分の身は自分でしか守れないのだから、肝に銘じておきたい。
(田幸和歌子)