「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店

「生チョコ」といえば、チョコレートの中でも口に入れるとやわらかく、くちどけの良いものだ。一般的な板チョコと異なり、チョコレートの濃厚でなめらかな食感がより楽しめる。
今では広く一般的に食べられているものの、実は、その生チョコは、神奈川県平塚に本店を構える洋菓子店が発祥といわれる。

今回は、その「生チョコ」が生まれた経緯を発祥の洋菓子店に聞いてみた。

生チョコの定義


「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店

「生チョコレート」には、明確な定義がある。日本チョコレート・ココア協会によれば、生チョコレートの定義は「チョコレート生地に生クリームや洋酒などの含水可食物を練り込んだチョコレート」であるという。「チョコレート公正競争規約」(全国チョコレート業公正取引協議会制定・公正取引委員会認定)に規定されている、日本独自の規格である。

欧米には、生チョコに似たものに「ガナッシュ」や「トリュフ」がある。ガナッシュは、単に溶かしたチョコレートと生クリームと混ぜた加工途中のものを指し、トリュフは中心部にガナッシュを入れてチョコレートでコーティングしたチョコレート菓子の一つ。


その点、生チョコは一つのチョコレート菓子でありながら、トリュフとは異なり、チョコそのものがガナッシュのやわらかな食感をそのまま味わえるように加工されたものだ。

生チョコの発祥は神奈川県の「シルスマリア」という洋菓子店だった!


「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店
生チョコ定番商品の「公園通りの石畳 シルスミルク」

その日本ならではの画期的なチョコレート「生チョコ」が誕生したのは、神奈川県の洋菓子店「シルスマリア」だったという。「1988年、寒い夜のこと、シルスマリアの厨房で、どこにも無い、全く新しいタイプのチョコレートが完成した」というのだ。

その誕生の経緯を、シルスマリアの製菓長に聞いてみた。

「当店は、1982年にスイス菓子の洋菓子店として、神奈川県平塚市で創業し、生菓子や焼き菓子を中心に販売しています。創業当時は、パイ生地の上にクリームを乗せ、その上に割ったパイ生地を重ねた『生パイ(現在:ベルク)』が人気商品でした。生チョコを開発したのは1988年のことです」

「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店
生チョコの名付けのきっかけとなった「生パイ(ベルク)」

「『生チョコレート』の名前の由来は、大好評だったその『生パイ』からきています。
生パイには、生クリームを使っていますが、チョコレートにも生クリームをふんだんに使い、その口どけの良さ、なめらかさが『生パイ』と類似することから、当時のショコラティエが『生チョコ』と命名したのです。その後、徐々にラインナップを増やしてきました」

酒入りまで! 進化し続ける生チョコ


「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店

現在、シルスマリアの生チョコには、数種類のベルギー産チョコレートを使った定番商品「公園通りの石畳 シルクミルク」の他、「スノーベリー」、「アールグレイ」、「シルスビター」、「金ごま」、「オランジェ」などの幅広い味展開がある。

また、日本酒や日本の焼酎、宇治の抹茶などのこだわりの素材と生チョコレートのコラボレーションによる『NAMA CHOCO×JAPAN』シリーズも、2016年12月頭にリリースしたばかり。シルスマリアの生チョコは現在進行形で進化し続けている。
「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店
『醸し人九平次 純米大吟醸 別誂』とのコラボ「九平次生チョコレート」

生チョコ発祥の地は、意外にも外国ではなく、神奈川県であったことは驚きである。その繊細な味わいは、日本人のこまやかなセンスを感じさせる。
今後、生チョコを食す際には、ぜひ誇りを持って味わってみよう。
(石原亜香利)

取材協力
「生チョコ」は日本の独自規格だった 発祥は神奈川の洋菓子店
シルスマリア本店

シルスマリア
本店:神奈川県平塚市龍城ケ丘 2-3
0463-33-2181
公式サイト:https://www.silsmaria.jp/
オンラインストア:http://www.rakuten.co.jp/silsmaria/