
ハマちゃんを濱田岳、映画版では元々ハマちゃん役の西田敏行がスーさんを演じるというトリッキーなキャスティングが不安視されていたこのドラマだが、2人の個性が存分に発揮されている上、22作品も放映された国民的映画の元のイメージを壊していない。
「いやいや、スーさんは絶対に三國連太郎だし、ハマちゃんは西田敏行だろ」。もし、自分の親父がこんな頭の固い事を言っていたらムリヤリにでも観させてあげて欲しい。一緒に観るだけで親孝行になる。そんな作品だ。
あらすじ
鈴木建設入社2年目のハマちゃんは、佐々木課長(吹越満)にビッグプロジェクト“フィッシングワールド”の視察のため、伊勢志摩出張を命じられる。調査と称して釣りに明け暮れるハマちゃんは、そこで昔恋心を抱いていた亜季(比嘉愛未)と再会する。一方の鈴木建設社長スーさんは、ハマちゃんと釣りがしたくてムリヤリ休暇を取り、ハマちゃんの恋人みち子(広瀬アリス)と一緒に伊勢志摩へと向かう。
亜季の眼のゴミを取ろうとしているハマちゃんを見て、キスをしていると勘違いするみち子。亜季といる所を部下に見られて愛人と勘違いされるスーさん。起きる事件起きる事件全てがベタだ。しかし、これは視点を変えると安心感とも言える。これが子供から大人まで一緒に観る事が出来る理由なのだ。
注意深くみないと見逃す小ネタ達
原作版釣りバカでおなじみ『合体』をご存知だろうか。そうこれは下ネタだ。もちろんドラマ版ではそんなに過激な描写はないが、しっかりとこの言葉は登場している。
がんたんから、スーさんと俺は
つりに行きます!今年もみち子さんと
たのしんで、たくさん思い出作って、
いや〜、めで鯛年にしたいですね〜
これはハマちゃんからみち子へと送った年賀状だ。この文章の左端を縦読みすると「がつたい」。『合体』だ。ドラマの冒頭からアオリで合体を期待させておいてのこのオチ。オチャメとしかいいようがない。
他にもみち子が勤める居酒屋かづさ屋の入り口に張ってある「新年はやる気が出しだい営業します」や、店内の「純米酒 廃人同然」。亜季を探すために作られたチラシに「推定年齢20〜40歳」など、散りばめられた小ネタも人気の要因。多すぎて一度観ただけでは見つけきれない。
なんだったのか不安になるほどにブッ込んで来る大ネタ達
放送前から報道されていた吉田沙保里と栄和人監督の登場シーンにも注目が集まっていた。一体どんな役でどんなセリフを言うのか、待ち構えていたらなんの事はない。
その直後、川辺でハマちゃんが釣り餌を買おうとしていたら、今度は『妖怪ウォッチ』のケータ(南出凌嘉)も登場。しかも「巨大な空飛ぶクジラを探している」と、世界感無視の映画宣伝もブッ込んで来る始末だ。繊細な小ネタと、雑すぎる大ネタのバランスに混乱して笑ってしまった視聴者も少なくないだろう。みち子に写真を頼んできたパンツ丸出しの変な女も、異様な雰囲気を放っていた。
老舗のボーイズラブ、セカンドシーズンは春から!
映画版が放映されていた頃、まだこの言葉は存在していなかったかもしれないが、この作品の見所は間違いなくBLという物だろう。ハマちゃんとスーさんのアドリブで繰り広げられるイチャイチャ感が観ていてとにかく微笑ましい。釣りが理由で仲良くなり、釣りが理由でケンカをする。もしかしたら、釣りとの三角関係なのかもしれない。
ケンカの後の仲直りでは、恥じらいながらお互いに「好きだよ」と言ってしまったりする。
(沢野奈津夫)