テレビには、“偉大なるマンネリ”と呼ばれる長寿番組が存在します。『笑点』や『サザエさん』、『徹子の部屋』がその一例。
何十年と続くこれらの番組には、当たり前ですが、内容的な目新しさはありません。しかし、たまにチャンネルを合わせると、何だかホッとするものです。
いつもそこにあり、いつでも見られる……。この安心感こそ、長寿番組の良いところ。そういった意味で『王様のブランチ』も、“偉大なるマンネリ”を体現した番組の一つといえるでしょう。

『王様のブランチ』が開始したのは、1996年4月6日のこと。以来今日に至るまで、MCやレギュラー出演者、レポーターを定期的に入れ替えながら、21年間、土曜お昼の定番情報番組として君臨しています。
しかし、平和な『王様のブランチ』の空気をぶち壊す事件が、今から約9年前に起こったのをご存知でしょうか?

2000人の中選ばれた未来のアクションスター・カンフー君


2008年3月29日。映画『カンフーくん』のPRをするため、主演のカンフー君こと張壮(チャン・チュワン)と、泉ピン子がスタジオに訪れていました。この映画は、中国から来日した少年・カンフーくんが、日本を揺るがす巨大な陰謀に立ち向かうという、アクション娯楽活劇。上野樹里、矢口真里、笹野高史、西村雅彦、古田新太、伊武雅刀など、豪華な俳優陣が脇を固めていたことでも話題となりました。

主演のカンフーくんは、オーディションで2000人の中から選ばれた当時8歳の少年。ジャッキー・チェンに憧れて、少林寺の武術学校に通っていたというだけあり、身のこなしは抜群。
この日もキレッキレの体術を駆使して、3人の武器を持った悪役と戦うパフォーマンスを披露します。

カンフー君の頭部から流れ出す鮮血…


槍での突き、青竜刀での切りつけを流麗かつ鮮やかにかわし、打拳や蹴りをかますカンフーくん。見事3人とも撃退し、ドラの「ドォオーン」という音と共に、カメラに向かって決めポーズをピシャリ。「見たか!ウチのチャン・チュワン!」と誇らしげに称えながら、MCの谷原章介・優香と共に、カンフー君の元に歩み寄るピン子。

この時、カンフー君の頭部にはじんわりと血が滲んでいました。激しいアクションを演じている最中、負傷してしまったようです。すかさず、ピン子が傷口を触ると、その手のひらには鮮血がベッタリ。
どうやら、思いのほか深手だったらしく、みるみるうちにダラダラと血が流れ出し、止まる気配はありません。カンフーくんも、露骨に痛がったりはしなかったものの、ちょっと泣きそうな表情になっています。

スタジオの空気を立て直した泉ピン子のファインプレー


この緊急事態において、ファインプレーを見せたのがベテラン・泉ピン子。本来であればここから、MCの優香が進行を委ねられていたはずですが、カンフーくんの頭から止めどなくしたたる鮮血を見るや、「あっ、あ、あ、あ…」としどろもどろ。おそらく、通常通り番組を進めるべきか、今はこの子役の心配をするべきか、判断がつかなかったのでしょう。

その狼狽を見逃さず、すかさずピン子が「これくらいの傷はね…チャン・チュワン、頑張るよ!」とカットイン。
そこから「かっこよかったよ!」とカンフー君を威勢よくセットの外に送り出すと、いつもの張り気味の声と明るい調子で、映画の紹介を続行。完全にMCに代わって主導権を握って場を回し、スタジオの空気を作っていました。

いつもと変わらない土曜お昼の風景は、一瞬、緊迫感で満たされたものの、このピン子の器量によって、かろうじて平常運転を保てたのです。これぞ、ベテランの仕事、といったところでしょうか。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりカンフーくん [レンタル落ち]
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