脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎

80話はこんな話
昭和26年3月。キアリスは3割も売上が落ちてしまった。
麻田さん!
「歪んどるやないか」と絶望しうなだれる麻田(市村正親)からはじまった80回。
週のはじめの月曜ですが、主題歌でいうところの「湿った日」回のようです。日曜の東京は冷たい雨が降っておりました。ああ、虹が見たい。
1年前、明美(谷村美月)に「体が動かんようになってうまい事つくれんようになったら・・・」「いずれは訪れるんです、そないな日が・・・」と語っていたことがとうとう現実になってしまいそうで、どきどき。
履くと幸せになる麻田の靴を、すみれ(芳根京子)はさくら(粟野咲莉)にもつくってもらおうとするが、
途中までやって「目もよう見えない 手も思うように動かない」と麻田は辞退する。
でも、さくらは「いやや」と粘る。
麻田はキアリスの社長をやっているはずだから生活には困らないだろうけれど、やっぱり職人の矜持があるだろうから、「引退」の二文字は重いに違いない。
さくらの靴が麻田の最後の仕事になるのか。
キリスア登場
「キリスマ」にも読める曖昧な字で「キリスア」と書いてあるのを見て、思わず笑ってしまう良子(百田夏菜子)。
キリスマ? カリスマ? 「桐島、部活やめるってよ」? の「キリスア」は「キアリス」の偽ブランド。すっかり忘れた頃に玉井(土平ドンペイ)が再び登場だ。じつに執念深いといいたいところだが、長いこと諦めずにキアリスのセカンドライン的なもの(そんないいもんちゃいますな、単なるニセ物)をつくろうと虎視眈々ねらっていたとはむしろ立派ではないか。
精度が下がったら潔く身を引こうとする麻田と、安価だけれど粗悪な商品に道を阻まれるキアリス。どちらも
ものづくりへの想いに関する、このドラマの根源的なところ。15週から時代が昭和30年代に飛ぶ前に、いまいちど基本テーマに立ち返っているようだ。明日はきっと虹の回だといいなあ。
今日の紀夫くん
キリスアの強面店員に凄まれながらも必死で立ち向かおうとする紀夫(永山絢斗)の緊張感漂う立ち姿に、
がんばれーと応援したくなる。
(木俣冬)