「人気声優200人が本気で選んだ!声優総選挙!3時間SP」(テレビ朝日系)という番組に出演したアイドルグループ「乃木坂46」の生駒里奈氏に対して一部で批判の声が上がり、ブログで謝罪するということが起きたようです。

生駒氏は番組内においてアニメ「ワンピース」が好きと紹介されていたものの、そのキャラクターの声優を知らなかったこと等がネットで反感を買い、ブログで土下座の写真とともに謝罪するという事態に発展しました。


芸能ネタには一切興味が無い私としてはこのようなニュースは本当にどうでも良い話なのですが、今回あえてこれを取り上げたのは、まさにインターネット社会において趣味の世界でも「オタクの老害化」が進んでいることを如実に表す話だと思ったからです。

あるべき姿を押し付けるのはまさに「老害」



生駒氏を叩いている人たちはおそらく「そんなことすら知らないのに漫画・アニメ好きを名乗るな!」という思いから批判をしているように思います。ですが、「自分たちが要求する水準を満たさなければ〇〇好きを名乗るのは認められない」というのは、ただの傲慢でしかありません。

そもそも趣味というのは単に自分が楽しめば良いだけのもので、「〇〇くらいは知らなければならない」という基準は一切無いはずです。ところが、彼等彼女等は趣味においても自分で基準を設けようとするわけですから、「趣味の世界を息苦しくする人たち」に他なりません。あるべき姿を押し付けるというところがまさに「老害」とも言えるのではないでしょうか?

確かに生駒氏のケースは漫画・アニメを単なる個人的な趣味に留まらず、仕事に繋げている時点で、ある程度の知識を求められることは事実かもしれません。ですが、視聴者に知識を伝授する専門家として出演しているわけではないのですから、炎上するほどのことでもなければ、土下座で謝罪する必要は一切無いはずです。


「オタク老害」はどんな趣味にでもいる


今回のケース漫画・アニメの分野の話でしたが、それに限らず知識の無い人をすぐマウンティングする人や、「これだから素人は!」と素人叩きをする人等の「老害化した人たち」は、多くの趣味の分野でも存在すると思います。コミュニティの中で古参メンバーがヒエラルキーを構築して自分の基準に見合わない“ニワカファン”を叩こうとする人も少なくありません。

このような「オタク老害」のあるある話に対して、「いるいる!そういう人!」と思い浮かべる人もたくさんいることでしょう。彼等からの厳しい目に晒されるのを避けるために、「趣味は?」と聞かれても、あえて「〇〇は好きですが趣味と言えるほどではないです」と答える人も少なくないはずです。

私は山登りをするので山関連の情報をネットで漁ることがあるのですが、そこでもやはりオタク老害をたくさん見かけます。もちろんあくまで一部の人たちなのでしょうけれども、目に入る度に本当に見苦しいと思ってしまいます。


老害化の原因は依存的アイデンティティー


でも、なぜ彼等は自分の水準に満たしていない人が「〇〇好き」を公言することを許せないのでしょうか?

おそらく彼等は“裸の自分”を自己肯定できておらず、自分のアイデンティティーを規定する際に、「〇〇好き」というポジションに非常に強く依拠しているからだと思います。つまり、アイデンティティーが過剰に趣味に依存してしまっているわけです。


それゆえ、自分より知識の無い人たちが安易に「〇〇好き」を名乗れるようになると、自分のアイデンティティーの根幹を揺るがすことに直結します。だから、自分と同じ基準を満たした人以外は認められないわけです。


ネット社会で膨張した「オタク老害」に負けてはいけない


もちろん「オタク老害」は近年に限った現象ではなく、昔から存在していたのだと思います。ただし、リアルなコミュニティの中のやり取りだけであれば、彼等は周りから疎まれて距離を取られることもあり、それが多少なりとも彼等に対する抑止力になっていたのだと考えられます。

ところが、閉ざされていないインターネット社会においては、身近な人に疎まれるということもほとんど無く、ひたすらマウンティングし放題で、叩きたい放題です。そのため、ネットを通じて趣味の世界でもどんどん老害化していく人があふれてしまっているのではないでしょうか。

生駒氏は謝罪してしまいましたが、叩いているのはインターネット社会において老害化したモンスタークレーマーなのですから、本当は謝罪するべきではありませんでした。彼らの言う通りにすれば、「〇〇好き」を語れない息苦しい社会へまっしぐらになってしまいますから。

そうならないためにも、芸能人や芸能事務所だけでなく、私たち一人ひとりが「オタク老害」を怖れず、是非「〇〇好き」をもっと気軽に公言して行く必要があると思うのです。そして趣味の世界を息苦しくする「オタク老害はマナー違反です」ということを積極的に広めて行きましょう。
(勝部元気)
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