プロテニスプレイヤー錦織圭が、目覚ましい活躍と人気を見せて久しい。今年も全豪オープンでは惜しくも4回戦で負けたが、フットワークと粘り強いプレイスタイルで白熱した試合をみせてくれた。
その実力の飛躍の理由には、同じ東洋人で過去に世界ランク2位までのぼりつめた元男子プロテニス選手のマイケル・チャンを2013年にコーチにつけてからと言われている。

そんな錦織を鍛えた凄腕コーチともいわれるマイケル・チャンの現役時代は、テニスファンのみならず覚えている人もいるのではないだろうか。

テニスの殿堂入りも果たしたマイケル・チャン


マイケル・チャンは台湾系アメリカ人の選手で、身長175cmとテニス選手としては小さい身体だったが、通算34勝という成績を残している。また2008年にはテニスの殿堂入りも果たした。ちなみに、錦織も178cmと小柄な体型ながらフットワークのあるスタイルという点で、彼と通じるところがあるのかもしれない。

16歳でプロ入りしたマイケル・チャンは、その身体能力を活かし、驚異的なフットワークとゲームメイキングによって、アジア系選手としては唯一のグランドスラム優勝を果たした。さらに驚くべきなのは、グランドスラムでの最年少優勝記録を17歳3ヶ月で達成し、保持していることだろう。
また1996年には男子テニス世界ランクで2位までのぼりつめ、当時スター選手だったアンドレ・アガシや帝王と呼ばれたイワン・レンドルなどを翻弄し、打ち勝つこともあった。その不屈のスタイルが印象的だった。

アジア人への軽視…人種差別とも戦った


ただ、そんなマイケル・チャンが現役時代に変えられなかったのは、西欧に根付く人種差別の壁という見えない障害だった。驚異的な粘りやトリッキーな動きで強豪を翻弄し勝利しても、そこにまっていたのはテニス界に残るアジア人への軽視だったという。嫌がらせやドーピング検査の不公平さ、そして勝利した彼のプレースタイルを「バッタ」「ドブネズミ」「紳士的でない」などと嘲笑されることもあったという。

そんなM・チャンは2003年に引退後、トッププロからのコーチのオファーを一切断り、隠遁生活を送っていた。
それにもかかわらず、錦織からのコーチオファーを受けた理由には、「アジアにルーツを持つものとして感じるものがあった」と語っている。
マイケル・チャンからその想いと技術を託された錦織の活躍にも、これからますます期待したいが、まずはその師弟関係で勝ち取る次のグランドスラムを応援したい。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonよりHolding Serve: Persevering On and Off the Court
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