大ヒットした「DA.YO.NE」
1990年代当時のラップといえば、まだHIP&HOPカルチャーのひとつでしかないテクニックだった。ラップというもの自体、日本の音楽シーンの理解もまだ未成熟なものだったが、その時期に早くからラップの新しさや勢いを取り入れ、日本語独自の情緒を表現していたアーティストも数多くいた。そんななか代表的なものが、1994年に発表されたEAST END×YURI の「DA.YO.NE」かもしれない。
若者が使う言葉を軽妙なメロディにのせた曲で、当時アイドルだった東京パフォーマンスドールのメンバー・市井由理とのユニットによって、その新しいグルーヴは一気に広まった。彼らはその後も「Maicca-まいっか-」「いい感じ やな感じ」など、普段の会話のような詞(リリック)を使ってブームを起こしたのだった。
また、それに前後するようにスチャダラパーや、DJとしてもおなじみのライムスター宇田丸、Zeebraなどが活躍していた。その後もRIP SLIME、KICK THE CAN CREWなど、などメジャーで活躍するアーティストも多く登場してきた。
日本語ラップの元祖・いとうせいこう
実はこの日本語ラップの元祖と言える楽曲を作っていたのは、現在では作家やクリエーターとしても活躍する、いとうせいこうに他ならない。いとうせいこうが1985年に発売したLP「業界くん物語」というのが、日本でのヒップホップ、日本語ラップの誕生として語り継がれているのだ。
その当時は高木完、屋敷豪太、藤原ヒロシ、竹中直人や今は亡きナンシー関など豪華なメンバーが制作に参加していた。そんな伝説の楽曲だが、30年の時を越えCD化もされている。
日本での音楽的な歴史はまだ浅いラップだが、最近はテレビ番組やCMで取り上げられたり、あばれる君やオードリー若林など、ラップ好きを公言し自らも挑戦している芸能人も多いようで、人気が高まっていることは間違いない。
今はその場の雰囲気でオリジナルのリリックをつくっていき、相手と対戦するようなフリースタイルと呼ばれるラップが流行りだが、まだまだ進化し続けるジャンルだろう。
(空町餡子)
※イメージ画像はamazonよりDA・YO・NE [7 inch Analog]