この息子を引き合いに出すまでもなく、桑田が“いい人”なのは間違いなさそうです。それはPL学園時代。下は上に絶対服従という"掟"があった中で、後輩たちから「天使」と称されていたエピソードからも窺い知ることができます。
さらにもう一つ、桑田のいい人っぷりを示すエピソードが、今から、10数年前に語られていました。
ビビる大木が語ったファン感謝イベントの一部始終
その話は、2004年1月ごろに放送された『堀内健とビビる大木のオールナイトニッポン』内で披露されました。話し手はビビる大木。彼は熱心な巨人党であり、それが縁となって当時開催されたファン感謝デーイベント『GO GO巨人軍』の司会進行役に抜擢されたとのこと。
大木曰く、この日は、清原和博、江藤智、仁志敏久、阿部慎之助、上原浩治、桑田真澄など、当時の巨人軍を代表するそうそうたる顔ぶれが集結したそうです。長年このチームの趨勢を見守ってきた大木からしたら、まさに憧れのスターと対面を果たすような感覚だったことでしょう。
大木を無視した阿部慎之助と代打の切り札・後藤
しかし、イベントが開始する前から、彼は現実と直面することになります。選手が会場に到着すると「おはようございます! よろしくお願いします!」と挨拶する大木。
さらに酷かったのが、代打の切り札として鳴らしていた後藤孝志。無視は当然で目もあわせず、「うるせーな」と言わんばかりに、タバコに火をつけたと大木は振り返りました。
イベント中に見せた清原の怖すぎる素顔
極めつけは、番長・清原。客席に向かってサインボールを打つコーナーに参加したときのこと。「打ちましたー!」「残念ながらアウトですねー!」などと威勢よく盛り上げていた大木に対し、マイクの入っていない状態でこう言ったそうです。
「オイ…。これ、いつまでやるんだよ…」
この時の大木は、まさにヘビに睨まれたカエル。緊張で顔をこわばらせながら一旦マイクをおいて、「あ、すいません…。あの、時間で区切って終わらせますんで…」と伝えた大木は、ラジオ内で「巨人ファン辞めようかなと思ったくらい巨人軍を嫌いになった」と感想を漏らしました。
桑田だけが唯一、大木へねぎらいの言葉をかけてくれた
打ちひしがれる彼を救ったのが、誰あろう桑田真澄、その人でした。
イベント終了後、袖にはけていく大木に対して「おつかれさん!ありがとね!」と、唯一ねぎらいの言葉をかけてくれたといいます。
「巨人軍は紳士たれ」という初代オーナー・正力松太郎の教えを、裏でも忠実に実践していた選手があまりいなかったというのは、何とも寂しい限りです。
(こじへい)
※イメージ画像はamazonより月刊 GIANTS (ジャイアンツ) 2006年 12月号 [雑誌]