AKB系グループ=15 ジャニーズ系グループ=5

これ、なんの数字かというと、2016年のオリコン年間シングルランキングTOP20の内訳です。ここまでの寡占状態、10年ほど前に誰が予想できたでしょうか?

年間1位は『翼はいらない』(AKB48)で151.9万枚、2位は『君はメロディー』(AKB48)で129.5万枚、3位は『LOVE TRIP/しあわせを分けなさい』(AKB48)で121.4万枚。

CDが売れなくなっている今の音楽業界において、言うまでもなく驚異的な売り上げです。AKBのファン、それに嵐を筆頭に堅実な実績をつくり続けるジャニーズの支持者にとっては、歓迎すべき結果でしょう。

このような特定の事務所や団体による市場の席巻は、過去にも類を見えることができます。例えば、90年代前半のビーイングブーム、後半の小室ファミリーブームがその一例。いずれも、現在AKB系グループとジャニーズ系グループが展開しているほどの圧倒的独占状態ではなかったものの、社会現象となったのは確かです。
そして、00年代前半。マーケットを占拠するまでには至らなかったものの、ある番組の企画を媒介として、ミリオンヒットが立て続けに生まれるという、なかなか珍しい現象が起きたのを、覚えているでしょうか?

『ウンナンのホントコ!』で放送された『未来日記』


その番組のタイトルは『ウンナンのホントコ!』。これは、1998年10月21日~2002年3月6日にかけて放送されたTBS系のバラエティであり、スタート当初のコンセプトは「世の中のホントのトコロを探る」というもの。その趣旨に沿い、「公園の地下に巨大な空洞がある?」や「カラス対策には何が一番効果があるのか?」など、まるで、『めざましテレビ』でやっている『ココ調』みたいな既視感たっぷりの内容だったため、さほど人気はありませんでした。
そんな番組の風向きが変わったのは、『未来日記』がスタートしてからです。

若者に大ウケだった恋愛ドキュメンタリー


これは、見知らぬ男女がスタッフから渡された日記通りに行動することで、果たして、本物の恋愛感情は芽生えるのか?……ということを検証するドキュメンタリー企画でした。着想は、『ドラえもん』に登場するひみつ道具「あらかじめ日記」から得たといいます。
日記(脚本)の制作を担当したのは、いとうせいこう、東野幸治、内村光良、優香などの番組出演者。オーディションで選ばれた男女が、初対面でぎこちなく会話を交わすところから、上記のようなタレントが書いた日記に従って行動するほどに少しずつ意識し始め、いつしかリアルなラブストーリーに発展していく様は、当時の若者から熱烈に受け入れられていったものです。


2000年の年間シングルランキング1位・2位を『未来日記』主題歌が独占


この物語を盛り上げたのが、有名ミュージシャンが手掛けた主題歌の数々。サザンオールスターズの『TSUNAMI』、福山雅治の『桜坂』、GLAYの『とまどい/SPECIAL THANKS』はミリオンヒットを記録し、中でも『TSUNAMI』と『桜坂』に至っては、200万枚超えを達成。しかもこの2枚のシングルは、2000年のオリコン年間シングルランキングでワンツーフィニッシュを飾ったため、「『未来日記』のテーマ曲に選ばれるとヒットする」という定説まで唱えられたりもしました。

そんな『未来日記』が『ウンナンのホントコ!』と共に終了してから約15年。日本のJ-POP史においてビーイング、小室ファミリーの時代があったように、ほんの一瞬だけ、『未来日記』の時代があったことを、私たちは忘れはしないでしょう。
そして、今の音楽市場に風穴を空けるメガヒット曲を生み出す媒介となる、今まで見たこともないような斬新な番組並びに企画が、またテレビから誕生して欲しいものです。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonよりTSUNAMI
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