カジュアル路線の腕時計といえば、今でもカシオの「G-Shock」などが有名だが、1990年代に登場したG-Shockに対抗するように発売された、もうひとつのカジュアル腕時計があった。それが、1995年11月に発売されたセイコーのカジュアル腕時計「アルバ・スプーン」だ。


斬新だったデザイン


その当時は斬新だった、近未来的な丸みを帯びたUFO形のような円盤型のフォルムと、デジタルウォッチならではのシンプルでスタイリッシュな文字盤のデザイン。
それに加えて、防水やストップウォッチ、アラームなどの実用的な機能や、若者が手に取りやすい手頃な価格帯といった要因もあり、月に1万個程売れればよいと言われていた腕時計の中、なんと月に10万個以上も売れるという大ヒットアイテムとなった。

発売当初はスポーツカジュアル、とくにその頃ブームの最盛期であったスノーボードファン、スケートボードなどヨコ乗り競技をする層をターゲットに、競技中でも着用できることが主にアピールされていた。しかし当時の腕時計ブームに乗って、「スプーン」は有名人やキャラクター、イベントなどとのコラボ商品を展開するなど、ファッションアイテムとしての地位も確立していく。
プラスチック製が主流だったスプーンだが、メタル仕様のものや、限定モデルなど、多くの種類が展開されたので、コレクションして楽しむ人も増えた。

生産終了となった「アルバ・スプーン」


現在はセイコーのアルバブランドが「ワイアード」となり、コンセプトも移行されてしまったため、スプーンは生産終了となってしまっている。
ただ、復刻版として数年前に数種類のカラーが販売されていたり、オークションには未だに当時のアイテムが出品されていたりもするようだ。中にはレアな稀少品が高値で取引されているようなので、まだまだ愛用する人も根強くいるのだろう。

同時期に流行していたカシオの腕時計G-Shockはごつごつしたデザインのタフさを売りにしている一方、セイコーのスプーンは洗練されたカジュアルなファッション時計だったともいえる。
しかし実用的なG-Shockがいまだに販売されていることを思うと、今や入手しづらいスプーンのほうが懐かしく、購買欲をそそられてしまうものだ。
(空町餡子)

※イメージ画像はamazonより[セイコー] SEIKO スプーン SPOON ワイアード 腕時計 AQGM005 [逆輸入品]
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