昨年、最下位に終わったオリックス・バファローズ。チームが浮上するためには、一昨年、昨年と7勝どまりに終わったエース・金子千尋の復調も必要となることだろう。


ところでこの金子、最多勝・最優秀防御率・MVP・沢村賞などを獲得し、選手としての絶頂期にあった2014年、自著『どんな球を投げたら打たれないか』をリリースしている。
この本にはタイトルの通り、変化球についての考察や理想のピッチングなど、野球ファンにはたまらない内容となっている。

清原和博が激怒した理由とは


そんな『どんな球を投げたら打たれないか』には、金子がプロ2年目のキャンプで経験したという興味深いエピソードも書かれている。

エピソードの概要は次の通り。この年のキャンプには、オリックスOBで当時マリナーズに所属していたイチロー(現マーリンズ)が参加しており、紅白戦で対戦する機会があった。金子はプロ1年目を怪我によって棒に振ったこともあり、まさに「背水の陣」であった。当然、紅白戦とはいえ結果を残すための真剣勝負だ。
イチローを打ち取るため、もっとも自信があった変化球で勝負を挑んだ金子。しかしそれがある人物の反感を買ってしまった。

その人物とは、当時はオリックスに在籍し、金子のチームメイトであった清原和博。昨年に一連の騒動でマスコミを騒がせたことは記憶に新しいだろう。
清原は巨人時代の2005年、二死満塁の場面でフォークを投げた藤川球児に対して、「ケツの穴小さいわ。チン○コついとんのか」と発言したことからも分かるように、「真っ向勝負=ストレート勝負」という考えの持ち主。

そんな彼は、金子に対しても「ストレートをほうらんか!」と怒りを露わにし、そのことが翌日のスポーツ新聞に取り上げられたと金子は語っている。

自信になったイチローの言葉


しかし、さすがはメジャーリーグでもレジェンドとして扱われるイチロー。彼の反応は清原とは真逆のものだった。
この金子との勝負でファーストゴロに打ち取られたイチローは、ベンチに戻る際に金子とこんな会話をかわしたという。

イチロー:「最後の球種はスライダー?」
金子:「そうです」
イチロー:「(少し笑みを浮かべて)ナイスボール」


まだプロで目立った実績がなかった金子にとって、このスーパースターの言葉はさぞ心に響いたことだろう。著書では、プロ入り後に自信を持てなかった自分が前を向く勇気となったと、イチローへの感謝が記されている。

イチローの言葉も胸にその後、球界の大エースへと成長した金子。著書が発売された2014年に受賞したMVPは、オリックス選手としてはイチロー以来18年ぶりとなる快挙だった。

※イメージ画像はamazonよりイチロー「10年物語」 (集英社ムック)
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