今から10数年前に、一大ブームとなった「青春パンク」。代表的なバンドを挙げると、175R、ガガガSP、銀杏BOYZ、B-DASH、ジャパハリネットなど……。


中高生特有の青臭さ。それをまるで勲章のように歌い上げるそのスタイルは、男子学生を中心に絶大な支持を集めたものです。
直撃世代だった現在の30代前半の中で、地元のカラオケボックスに入り浸り、フリードリンクで喉を洗いながら、夜通し歌い明かした思い出がある人も多いのではないでしょうか?

『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』でブレイクしたサンボマスター


こうした青春パンクの中でも、一際異彩を放ったグループの一つが、サンボマスターです。2000年から活動を開始していた彼らの転機は、2005年。フジテレビ系のテレビドラマ『電車男』の主題歌に『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』が抜擢されたことで、一躍その名を世間に轟かせます。
フロントマン・山口隆の振り絞るように歌いながら、ギターを必死にかき鳴らすその泥臭いパフォーマンスは、青春パンクとは何たるかを雄弁に語っているかのようでした。

酷すぎたデフォルメメイクも話題に


そんなサンボマスターを、コントに仕立て上げたのが『はねるのトびら』でした。その名も“ブサンボマスター”。

ドランクドラゴン塚地・インパルス堤下・キングコング梶原によるこのパロディは、災難に見舞われた青年役のキングコング西野の前に突如、ブサンボの3人が現れ、「お兄さんの気持ちはねぇ、痛いほど良くわかるんですよ!」と言った後に、オリジナル楽曲『言いたいことも言えずに』を披露するというもの。計8回放送されましたが、全て同じ筋立てで展開されました。

酷かったのが3人の容姿。山口役の塚地は、極端にハの字に曲がった眉毛とマジックで塗りつぶした鼻の穴、そして、滝のように流れ出る汗が特徴。ベースの近藤をモチーフにした堤下は、何故か鼻の下に大きな斑点を持ち、ドラムス・木内のポジションに座る梶原に至っては、寄り目&出っ歯を強調し過ぎのホラーじみた人相で、本人の面影は一切ありません。

CD発売に本家ボーカル山口も苦言


このような、あまりにも悪意満載なデフォルメメイクを施していたために、2005年2月8日の放送開始当初より、ファンからは苦情が殺到。
その後、塚地が番組内で謝罪する事態に発展します。
ここで終わっておけば良かったものの、同年8月31日には『言いたいことも言えずに』でメジャーデビュー。これには、ファンのみならず、山口もインタビューで「CD発売はやめてほしかった」という旨の苦言を呈していたものです。

本人の身体的特徴を過剰にデフォルメした“モノマネ”ならば、コロッケ⇒五木ひろし、木梨憲武⇒北島三郎などの前例がある通り、まだ許されたかもしれません。しかし、ブサンボマスターの場合、モノマネだけに留まらず、本家のテイストを真似た楽曲を発売してしまったのがマズかったのでしょう。

なお、『言いたいことも言えずに』は、所属事務所などからのクレームを受けて「ブサンボマスター」ではなく「塚地武雅・堤下敦・梶原雄太」名義でリリース。
しかしオリコン初登場で4位を記録。皮肉にも、サンボマスターが『世界はそれを愛と呼ぶんだぜ』で記録した、グループ自身の最高順位である7位を上回る結果となってしまいました。
色々なゴタゴタで何ともケチがついたものの、楽曲自体はなかなかの良曲。聴いたことのない方はぜひ一度視聴してみると良いでしょう。
(こじへい)

※イメージ画像はamazonより言いたいことも言えずに(DVD付)